カリフォルニアの古ぼけた農家にひっそりと住むタシーとローレン。
タシーは,暗号の専門家で,手すさびに“四次元立方体”の研究を続けており,ローレンは,無名以下の作家。
そんな彼らのところに,パルという韓国人の子供が出入りするようになります。
パルは,音楽的才能と数学的才能に恵まれており,“四次元”の世界を具体的に感じることができたのです。
パルは,“四次元”の世界にも,人間がいるといいます。そして,音楽を通じて,“四次元”世界とコンタクトをとろうとするのですが…。
1986年度のネビュラ賞,1987年度のヒューゴー賞短編部門のダブル・クラウン受賞作品であり、また、数学SFとして,名前のあがる有名な作品でもあります。
「タンジェント」とは,われわれの三次元空間と,四次元空間との,いわゆる“接点”(接面かな?)のことを指すらしい。
二次元空間の人にとっては,“球”が二次元空間を通り過ぎるのは,点から円に拡がり,やがて縮んで,点となって消える…というのは、何とかわかります。
これが,一次元あがって,“四次元”物体が,われわれの世界を通るときに,いったい,どのような見え方,現れ方をするのでしょうか。
この作品では,急に風船のようなものがふくらみながら現れたりします。
だしぬけに,タシーのすぐそばに,直径1ヤードほどの,薄膜でできたような明るいブルーの球が出現し,急速にふくれあがり,ねじくれ,凍りつき―瞬時に消滅した。
なるほどねえ。
昔,“四次元”といえば,「時間」のことだと,わけもわからずに,覚えていたものだが,三次元世界の外にひろがる次元とはなんなんでしょうか。
ハインラインの「歪んだ家」では,見た目は,一部屋なのに,中に入れば多数の部屋がある―空間が折りたたまれている不思議な構造を描いていたが,超空間と似たような考え方なのでしょうか。
同性愛者であり不法入国者でもあるタシーと,身寄りもなく故郷のないパルという,ともに居場所のない二人が,この世界に見切りをつけて,“四次元”の世界へと抜け出ていく,やや物悲しい展開となります。
「歪んだ家」のような無骨で単純なストーリーとは異なり,“人間”を描くという「次元」も加わっていますが、この辺は好みの問題でしょう。
二人のよき理解者であるローレンの,名脇役としての渋さも光ります。

