2005-01-01から1年間の記事一覧
何度読み返しても,涙腺がうるむという作品には,滅多とは出会わないものですが,この作品は,そのうちの一つ。 もともとは,短編として発表され,後に,より詳細な長編版が出たのだが,前者は,1960年度のヒューゴー賞短編部門を,後者は,1966年度のネビュ…
主人公が,墓石などいらないと思ったのは,墓石があれば,そこになにか言葉を刻まなければならないからでした。 墓碑銘のない,主人公の妻の墓を見ていた男が口を開きます。 「読ませてもらってかまいませんか?」 男は,墓を読むといいます。 主人公の妻は…
7歳のコーリーは,パパと別れ,ママと一緒にママの姉の家に同居することになりました。 じとじとと水の染み出す灰色の臭いのする地下室の簡易ベッド。 コーリーはときどき思います。 地下室の壁の向こうには,灰色の怪物が潜み,ぼくを灰色の国に連れて行こ…
「火星は本質的に(地球と)同じ軌道にあります。火星は太陽からだいたい同じ距離にあり,その点が非常に重要です。われわれが目にしてきた写真には,運河と思われるものと,水が写っています。水があるなら,酸素があるということです。酸素があるなら呼吸が…
剣闘士としての年季を明け,北欧への帰郷の旅に出たクラウス。 無骨一徹で,勇者の誇りと真っ直ぐな心根を有する彼は,道すがら,ナザレからエジプトへと向かう幼子を,無慈悲なヘロデ王の親衛隊の手から救います。 その時,幼子から天の声が発せられます。 …
この短編は,老齢者が理由もなくバタバタと死んでいくという,奇妙な現象の進行と顛末と謎探りのお話です。 この現象に気がついた保険計理士である主人公は,こう言います。 「なんてこった!この率でいくとそのうち75歳以上の老人なんて,どこにもいなく…
クレイジー・エイリスの目には,この町の現実の世界に,燃えさかり,崩れ落ちる建物と人々の阿鼻叫喚がうずまくのが,透けて見えます。 炎につつまれ,痙攣する黒い肉塊と化す人々。 彼らの影は薄くなり,今見る姿はまるで亡霊のようです。 だが,これらのこ…
特殊部隊隊員のダンツラーは,ニカラグア侵攻のための拠点確保のための作戦に参加していました。 彼の小隊は,マッチョな黒人DTを隊長に,神経衰弱気味のムーディとケイジャンのルドゥー。縮み上がる気持ちを抑え,好戦的で活動的になるためには,特殊アン…
巨大な核融合反応炉によるイオン推進式の巨艦ミダス号で,宇宙航路において大活躍してきたジーク船長とその妻メアリー。 いつしか年月が過ぎ,宇宙航路の花形だった巨艦は,より経済性を重視した直接推進式の小型船に取って代わられており,ジーク船長も運航…
私には,誰も手を出せない。 私こそ,この世の王者なのだ。 だが,私が王国を譲り受けてから,30年の長い年月がたっていた。私は,世界を分かち持つべき少年を探していた…。 遺伝学的,環境的要因により,行動の抑制に限界の見られた彼は,15歳のときに少女…
ポージーの住んでる世界は,千フィートもの高さの壁でぐるりと取り囲まれていた。 壁を越えた世界に行っちゃいけない。 子供たちは,厳しく戒められ,魔法の勉強に励むのである。 でも,ポージーは,空高く飛んで,壁の向こうを覗いてみたい。 あそこを越え…
私は,デスクに向かって,褐色ペリカンの状況についての報告書を読んでいた…と,その時,国務長官がとびこんできて,「大統領閣下!」と眼を剥きながら,「エイリアンが来ましたッ」 このエイリアンは,自らを“ヌープ”と称し,すでに1954年にアイゼンハ…
野戦基地から夜間パトロールに出ての帰り,レスティグ兵長は,敵の仕掛けた罠に踏み込んでしまいます。 猛毒を塗布された鋭利な竹の杭を踏み抜く瞬間,闇の中から“バシリスク”が現れ,毒を中和し,再び闇へと消え去った…と同時に,レスティグは、尖った杭を…
ぼくたちは,この惑星の特別保護地域に住んでいる。先住種族のトゥリックと,ある種の協定を結んでいるのだ。 トゥガトゥワは,トゥリックの政府の特別保護地域の担当で,ぼくたちの家に出入りする特別の存在なのである。 トゥリックは,卵生であるが,いわ…
狂った機械戦士バーサーカー・シリーズで有名なセイバーヘーゲンの1976年の作品です。 長い人工冬眠から目覚めたバートは,「船」から,24人のあかんぼうたちの世話をするように指示されました。異星開拓者の第一世代の親として。 いわゆる,おなじみの世代…
C.L.ムーアといえば,「シャンブロウ」,「美女ありき」が有名ですが,私としては,この「ヴィンテージ・シーズン」が大好きです。 ある場所のすばらしい5月に,優雅な身のこなしと、尊大で自信に溢れた完璧さを漂わせる,不思議な異国情緒を感じさせる…
外宇宙からやってきたデンディ族とトロクスクスト族に、かわるがわる“解放"された地球は、ついには西洋梨型にひしゃげてしまい、空気が大量に流出し、荒廃の極みに陥っていました。 それでも、人類の末裔たちは、乏しい空気を啜り、空き腹を抱え、草むらにし…
巨大なスクリーンに明滅し躍動するプリティ・ボーイ。 仮想空間での生を選択し,永遠の若さと美しさを手に入れて,世界中の注目を浴び続ける。 こんな素晴らしい世界への切符を手に入れることができるのは,本当のプリティ・ボーイだけ。 一体,何を躊躇する…
この作品は,相当,奇想天外なストーリーです。 宇宙が縮小しはじめ,物質世界が凝縮されていくことを知った人類は,なんとか自足できるレベルの都市自体をドームで囲い,可能な限りの強力な推進装置を設置して,縮みゆく宇宙の壁を突破しようと試みたのです…
隣家に住む男チャールズ・クルージが,顔をキーボードにくっつけて,側頭部を吹き飛ばされて死んでいるのを主人公が発見するところから始まる,かなり薄気味の悪い作品です。 このクルージという男は,ハッカーで,自らのデータを各機関のコンピューターから…
エイン博士は,白血病ウィルスを変異させ,恐るべき致死性のウィルスを作り出した。 極めて感染力が高く,媒介生物としてはすべての恒温動物が可,免疫機構そのものを利用するので予防は事実上不可能,下等哺乳類では回復率は90%近いが,ヒトなど高等霊長類…
バッファローといっても,野牛のことではなく,アメリカ東海岸の工業都市のことです。 近代産業資本主義勃興期の,ポーランドからの移民で,職を転々としていた作者の父親を主人公としています。 彼は,大恐慌のとき,雇用促進政策の一つである市民資源保存…
この作品は,ユーモアものでは,定番の作品です。 1300年,ヴェネチアの商館に,一人の男が現れ,当主との間で,10枚の金貨を,100年間,年率利子1割で信託するという奇特な約定を行います。 その際に,その男スミスは,マルコ・ポーロへの援助,…
私のような文系人間にとっては,ちんぷんかんぷんながら,マッドでポップな感覚がかっこいいなあと思わせる作品である。 BC飛行とは何か。 訓練を受けた数理飛行士が,純粋に数学的なメカニズムと特殊な心理訓練によって,抽象世界にはいりこめるようにな…
ジャック・フィニイは,同じ趣向の物語を何度も何度も描いている。古き良き時代への強烈なこだわりと愛着。頑固親父の,一念のようなものだ。 この作品も,その代表的な作品の一つである。 19世紀末の風情を色濃く残す美しい街,ゲイルズバーグにも,開発,…
1977年に42歳の若さで世を去ったトム・リーミイの代表作。 といっても,サンリオの短編集が高価すぎて持っていないので,この作品とデトワイラー・ボーイしか読んでいないのではあるが。 ジョン・リーは,カンザス南部の貧村から,ロサンジェルスへと出てき…
クラーク,アシモフと続けばということで,ハインラインのペシミスティックな「大当りの年…The Year of Jackpot」を。 若い女が,路上で何ゆえか素っ裸になってしまうという,おかしな出だしで始まる。 主人公のブリーンは,数学好きな事業コンサルタント。 …
オールタイムべストで,いつでも上位にランクされる作品でありながら,アシモフ先生は,これがベストの短編だといわれることに,フクザツな思いがあるとおっしゃる作品である。 6つの太陽を有する惑星ラガシュ。 2049年目ごとに一度の夜が訪れようとし…
超新星の探査に向かった調査船。 彼らは,爆発による消滅をかろうじて免れた惑星を発見し,その地下に,超新星となった恒星系に存在した知的種族の膨大な遺物が残されているのを知る。 まだ,恒星間航行の技術を手にしていなかったこの種族は,存在の証を残…
惑星ボードレールに,緊急着陸した宇宙船。 衝突のショックで生き残ったのは,ポーラ・フェッツ博士と息子のエディの二人だけであった。 エディは,植民惑星におけるオペラ調査という怪しげな名目で参加したテナー歌手で,いわゆるマザコンの青年である。 万…