2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

カロリーマン~パオロ・バチガルピ①

「考えてみるがいい。ケチんぼの亭主が女房を寝取られたことに気づかないまま、世界中にその実を配る。ところがその実は、受粉したい、健康な子をつくりたいとうずうずしているわけだ。その子孫も同じ花粉を宿し、それがさらにカロリー会社の収益源を汚染す…

死の船~バリントン・J・ベイリー④

「彼はジョイスティックに手をのばした。まず右へ、ついで上へスティックを動かすと、未来飛行船がガクンとかたむき、急角度で上昇した。 つぎの瞬間、デ・クルイフがシートベルトを外しにかかった。立ち上がると同時にアンビリカルコードを引き抜く。それか…

永夏の夢~夏笳①

「おまえはかつてこう言った。 あなたの時間は長すぎる。わたしの時間は短すぎる。だからわたしはあなたのそばに長くはいられない。わたしはいつか死ぬだろう。あなたはまだ生きていて、永遠に生き続ける。最後にはわたしを忘れてしまう。忘れられるのは死よ…

ロンドンにおける"ある出来事"の報告~チャイナ・ミエヴィル①

一九八八年二月十一日木曜日、可能な限り正確な時間として午前三時から午前五時十七分のあいだ、ロンドン南東局十八区のプラムステッド・ハイストリートを南にやや行ったあたりで、"ヴァーマン通り"が出現した。空間的制約のためか、今回のヴァーマン通りは…

ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?~ジェイムス・ティプトリー・ジュニア⑧

「ぼくは男だ。そうだ、怒ってる。ぼくには権利がある。きみたちにこのすべてを与えたのは、ぼくらなんだ。ぼくらが創りだしたのだ。かけがえのないきみらの文明を建設し、知識と慰めと薬と、そして夢を与えた。何もかもを。きみらを保護し、家族にすこしで…

不可視配給株式会社~ブライアン・w・オールディス⑤

「で、このひとの目的というのは?」ドアに向かいながら、皺だらけの男は軽い笑い声をあげた。必ずしも愉快そうではない、かといって、必ずしも非情とは言えぬ笑い声だった。「わかりきってるじゃないですか、そのポット二つを護ることですよ。おやすみ、ご…

ポータルズ・ノンストップ~コニー・ウィリス④

「フォート・サムナーにビリー・ザ・キッドのお墓がありますよ。ここからだいたい七十マイルですね」 ぼくはといえば、はるばるアリゾナ州ビスビーから車を運転してきたばかり。いま一番やりたくないのは、また車にもどって百四十マイルの距離を往復し、名前…