走れ,走路~ロバート・A・ハインライン②

 動力の時代は,ほとんどそれと気がつかないうちに,輸送の時代へと合流していったが,その変化のなかで,二つの顕著な事件があった。太陽熱スクリーンの発明と,最初の移動走路の開設である。

 この迅速にして安全,かつ低廉にして便利な輸送機関は,またたくうちにアメリカの全土に普及し,社会機構の基盤をなすまでになったのであります。

 そんな移動走路において,サクラメント運転区で非常停止事故が発生します。
 万全の安全性を誇るはずの移動走路。

 実は,走路工員組合のサクラメント支部が,自らの権利利益を獲得するため,“労働者革命”を起こさんと企てたものだったのです。

 
 移動走路という,ハインラインの説得力のある魅力的な未来予測の図も素敵な作品でありますが(実に生き生きとえがかれています),対組合闘争を通じて表されるハインラインさんの思想がまことに興味深いところであります。

 ハインラインさんは,主人公の技師長ゲインズにしゃべらせます。

 だが,それにもまして重要なのは士官学校です。われわれは生徒たちに,忠誠心を,どんな犠牲を払ってでも社会のために己の義務を果たそうという鉄の意志と決断力を植えつけ,立派な技師として世に送り出すように努めています。その点ではげんにアナポリスやウェスト・ポイントが実績をあげているが,それに負けないようにしっかりとね。

 どうです,ハインラインさんの思いがむんむんと伝わってくるではありませんか。

 “反動”の連中に,毅然として立ち向かい,徹底的に打ちのめす。

 物語は,まあ,一本気で明快な主張が一貫しているため,力強さを感じますが,いやすごいよね。

 個人の利益より,体制なり国家なりの公益を優先すべし。

 最近の風潮からは,だいぶとずれているような気がして,かえって新鮮な感じもしますが,まあ,この手の主張は,軍隊・戦争ということにリンクしてしまいまして,ややおっかねえというところがありますね…。

 まあ,それはともかくも,迫力ある“こわもて”作品というだけでなく,想像しやすい未来技術の世界にぐいぐいと引き込まれる面白い物語であります。

 ところで,ここしばらく,阪急梅田の“移動走路”にのっていないなあ。