2024-01-01から1年間の記事一覧
「SFマガジン」2025年2月号(第767号)は、創刊65周年記念として、オールタイム・ベストSFを発表しています。 2014年から10年ぶりとのことですが、オールドファンの私としては、その昔のオールタイムベストと比べながら、見ていきたいと思…
「人生がどんなに長くても、あるいは短くても、ものごとには一度だけでじゅうぶんすばらしいこともあるわ。おやすみなさい、わたしのスロウボート・マン。おやすみなさい」 永い時を生きる吸血鬼の女性が、ただ一人愛した男性との出会いと別れを描き、小品な…
鉱山の奥深く、わたしの足の下でゆっくりと自転しているのは、一つの惑星だった。 「こんなこと、ありえない」途方もないエネルギーが大陸サイズの岩の塊を切り出す様子に、わたしは息を呑んだ。視点はかなりの高度で—少なくとも三万メートルはあり—その光景…
この物語は、中国がアメリカを支配し、毛沢東?的主義による言論、思想統制が徹底されている世界を描いています。 「文化工芸省」に勤める主人公・董健(トン・チェン)は、出世街道を走る、野心のある若手官僚ですが、出勤途上のある朝に、奇妙な薬売りから…
「おまえはトログ並みのバカだな。ライターの火でガス漏れを調べるなんて、頭に脳みそはいってるか?ボケちまったのか?」 環境汚染が進み、人々は、有害物質にさらされ、添加物だらけの食品にさらされて、痴呆化と妊娠異常が深刻となっている、気の滅入るよ…
「埋もれた秀作をふたたび世に出したい」 宇宙探査SF傑作選「星、はるか遠く」(創元SF文庫)の巻末解説で、編者の中村融氏が語る、アンソロジーを手掛ける際のコンセプトです。 私も、SFマガジンなどに訳載されたきりで、忘却されるのは惜しいなあと…
"監視者を監視するは誰ぞ?" リチャード・カウパー(1926~2002)を知る人はそんなに多くないでしょう。ジョン・ミドルトン・マリー・ジュニアという作家が、60年代中頃から、SFやファンタジーに主力を移した際に、別ネームとして使用した名前です。 彼の…
昨年に並んで、今年も観測史上最も暑い夏となりましたが、9月に入れば少しはしのぎやすくなるでしょうか。 晩夏の時期になると読み返したくなる作品の一つが、バリントン・J・ベイリーの本作品です。 実は、いわゆるベイリーらしさがないといってもよい作…
コンピーター・リサーチ社なるところで人事部長をしているケネディ。 会社の研究者オーエルバッハ博士は、脳が記憶を蓄えるように、未知の超自然的な力を、現実の力に変換し、貯めることができる機器を発見しています。 この研究を発展させて「反重力」を手…
感染症の蔓延と、「生」ではなくても、ステージを手軽に楽しめるホログラムが音楽産業の主要なコンテンツとして「蔓延」したおかげで、ライブがすっかり廃れてしまった時代に逆らって、わずかに残るファンを相手のギグにこだわって、町から町へと、どさ回り…
サッシー・フランシー:ユキノシタ科:ときにマザー・オブ・サウザンドとよばれる 仕事も一段落し、久々の休暇をニューイングランドで楽しんでいたウィンストン。愛車のサンダーバードを駆って、気ままな旅を続ける途中、アトランティック・シティを訪れたウ…
If human is angry, then Robot is sad. If human is rude, then Robot is embarrassed. If human is happy, then Robot is happy. 主人公は、感染症の蔓延を予防するため、エリア内を巡回し、住人の健康チェックにいそしむドローン型のロボットです。役目が…
スタージョンの短編タイトルのごとく、ある日、地球の空は、巨大な宇宙船でいっぱいになります。 世界中の人々が恐れおののく一方で、白髪白髭で白服をまとった老人たちが各地に出没します。 彼らは、みな同じセリフを口にします。 「わしらは神じゃ。この世…
「まぶたをとじると、はじめて出会ったときの彼女の姿が目に浮かんでくる。小さくて、きゃしゃで、異様なまでに血の気のない肌と、目じりのつりあがったチョコレート色の目をしていて。髪は、雲のない晩に見る月のように白かった。」 月に建造されたコロニー…
19世紀末のイスラム世界にあるまち、ブーダインのラマダン明けの祭礼の夜、貧民街の暗がりの薄汚れた路地に、12歳の少女ジハーンが誰かを待っています。 この夜からのジハーンの運命は、どのように展開していくのか、彼女にもわかりません。 一つの物語…