本気で宇宙探検にとりくむつもりなら,太陽系では相手不足だ。人類は星ぼしにおもむかねばならず,妥当な時間であちらにたどり着ける方法を発見しなくてはならない。超光速推進。これしかない。
相対性理論のほころびを見つけようと奮闘する,ややマッドな二人の科学者は,ついに,実験用小荷物を,光速の7倍ものスピードで移動させることに成功します。
その結果をてんから信じようとしない当局のはなをあかそうと,彼らは,有人宇宙船による超光速航行に挑もうとした矢先,“ジージニー”と呼ばれるエイリアンたちが,地球にやってきます。
ジージニーたちがいうには,
超光速旅行は不可能ではありません。ですが,それを試みる種族は非常な危険にさらされ,完全な破滅をこうむる恐れがあります。その試みが地球でいま,まさに進められております。わたしたちジージニーはふたつの大きな目標を持ってやってきました。その実験が行われている場所を正確に突きとめることと,彼らに実験の中断と断念を進言するよう,地球のみなさんに警告することです。
さあ,早速,例の科学者たちは拘束されてしまいます。
ジージニーたちの言うことは本当なのか,それとも何か別の意図をもっての策略なのか?
というわけで,この作品は,宇宙を股に翔けるSFの推進役であります「超光速推進」をテーマにした,ハードSF系の小気味よいお話であります。
シェフィールドさんは,「超光速推進」には,莫大なエネルギーを必要としますが,このエネルギーを「真空」から取り出すと,宇宙空間に局所的なストレスが生じ,そのストレスが解放される際には,その空間領域がまるごと宇宙から弾き出されてしまうのではないかという懸念をジージニーに言わせています。
いやはや,「真空」から取り出せるエネルギーは無限とも思えるほど巨大ということで,「真空」と「無」とをごっちゃにしている新聞記者が揶揄されていますが,私もおんなじレベルですね。反省…。
ジージニーは,「超光速推進」を6回行えば,致命的結果になるとのメッセージを残して,さっさと地球を立ち去ってしまいます。
さあ,我らがマッド・サイエンティストたちは,どうするのでしょうか。
ジージニーの言うとおりならば,相対性理論のもとでの秩序だった世界ですが,SF的には面白くない世界,ジージニーが嘘をついており,ガンガン宇宙空間に飛び出すことが可能であったとしても取り返しのつかないリスクが控えている…このジレンマをくっきりと示した興味深い作品であります。
「SFマガジン」1992年1月号掲載。
