フリッツ・ライバー
フェンダーに鈎針を溶接したクーペが,あたかも悪夢の鼻面のごとく,曲り角からぬっと出現した。その通り道にいた娘が凍りついたように立ちすくんだ。マスクに隠された顔も恐怖にこわばっていたに違いない。 第三次世界大戦の名残を残すニューヨークを訪れた…
1947年のある日,おれの狭苦しいスタジオに入ってきた女。 カールして広がった黒髪の下からのぞく,これ以上ないというほど飢えたふたつの目。 飛び込みのモデルとして,何枚かの写真をとり,おれはお得意に試しに見せてみた。 どのお客の反応も同じ―「彼女…
わたしは,シェイクスピアが偉大な戯曲を書き消すのを見た。ソクラテスが偉大な思想を思い消すのを見た。キリストが偉大な言葉を言い消すのを見た。
そのときわたしがマンハッタンで,そしてあの有名なビルディングで遭遇したことは,夢でもなんでもない,完全な現実であり,わたしはたしかに別の《時間の流れ》にはいりこんだのだ―そう確信することもしばしばある。
パパに言われて,ぼくは余分の空気を一杯取りにいった。バケツがほぼいっぱいになるまですくいいれ,指がそろそろかじかみかけたとき,それが見えたのだ。
素直で平明な作品もよろしいが,少し斜に構えた衒学的な作品も,そういうものを読んでいるんだという自尊心をくすぐるところがある。 もちろん,こちらの知識レベルを問われることになり,歴史・風俗・文学に対する素養がないことを思い知らされることになる…