世界の終わりを見にいったとき~ロバート・シルヴァーバーグ②

 ニックとジェインは,今月のマイクとルビイの邸宅で開かれる素敵なパーティで,話題の中心になれるいいネタを持っており,得々としていました。

 最近はじまったばかりの旅行会社の目玉企画である,「世界の終わりを見る」タイムトラベルツアーに参加してきたところなのです。

 地球上に生命が存在しえなくなった未来。灰色の海と浜辺にうごめく地球最後の生命体のカニのような生物。やがて,それが動くのをやめてしまったとき,ラウドスピーカーの声が言う。

 「いましがたごらんになったのが,地球最後の生物の死です。」

 一座の注目を浴び,得意満面の彼ら。

 ところが,パーティに遅れてやってきた連中が,どいつもこいつも,そのツアーに参加したよという始末で,ニックとジェインの話はすっかり色褪せてしまいます。

 不思議なことに,みんなが見たこの世の終わりは,どれも異なるのです。

 すっかり水に覆いつくされてしまう世界,どこもかしこも氷河だらけになった世界,太陽がノヴァ化した世界…。

 
 不倫の下心をもちながら,パーティに集まってくる連中。
 はるかな将来の世界の終わりを見にいき,その変わり果てた有様を,鼻をうごめかしながら得意げに話す連中。

 まさに,ひとごと,危機感なしの世界であります。

 かといって,現実の世界が平穏かといえばそうでもないようです。

 政府の研究所から,組織溶解ウィルスを持っているミュータント・アメーバがミシガン湖へと逃げ出したり,デトロイトのフォード本社を組合が核爆弾でふっとばしたり,地下核実験のせいでロサンジェルスがほぼ壊滅するような大震災が起こったり,大統領が続いて暗殺されたり…。

 そんな世紀末的状況が現実に起きている中で,こんな能天気なパーティに現をぬかしている彼らの姿こそ,ほんとうに世も末だという感じです。

 軽妙な皮肉を利かした洒落た作品であると思います。

 それにしても,デカダンな雰囲気を上手にだしています。
 作者のさめたシニカルな視線がよろしい。

 「SFアドベンチャー」1991年5月号掲載。
 この号は,日本人中心の雑誌ながら,珍しくも,海外特集を組んでいます(といっても3編だけですが)。

(追記)

 なかなか入手が難しい作品でしたが、SFマガジン創刊50周年記念アンソロジーに拾われて、生き延びました。