惑星ハンドレアに不時着した主人公。
濃密な大気をかきわけ,空の彼方からやってきて,彼をさらっていったのは,蜜蜂にそっくりの大きな生き物でした。
蜜蜂は,彼を巨大な巣へと連れて行き,彼を素っ裸にし,念入りに確認したうえ,倉庫のような大きな部屋へと放り出します。
幼虫の餌にされるものと覚悟していた主人公は,やれやれ助かったと,救助を求めて巣の様子を伺いに出かけます。
蜜蜂たちは,ありとあらゆる物を収集し,吟味し,知識として貯える習性をもっていたのであります。
蜜蜂たちに知性があるのではと期待した主人公は,コンタクトをとろうとするのだが,蜜蜂たちはてんで相手にしません。
主人公を知識・経験を得るための収集の対象とする以外は全く興味も関心もなく,コミュニケーションをとる気などさらさらありません。
主人公は,貯えられた知識が“蜂蜜”として濃縮されているであろう巣の中心に,ほんものの「知性」が存在しているのではないかと探査を進めていくのでありますが…。
ベイリーさんの相変わらずの奇天烈なお話であります。
設定が,スターリングの「巣」によく似ているのですが,ベイリーさんは,巣の異様さ以上に,知識と経験が「ローヤルゼリー」のように熟成・凝縮された世界にどっぷりと浸かる,めくるめく体験譚というものを描きたかったのでありましょう。
普通ならそこまで突き詰めて考えないわなということに生真面目に取り組むことによる可笑しさただよう,ベイリーさんの面目躍如たる作品です。
それは,意味のない,それを検証するものも照らすものもない知識であって,実際的な結果を生み出さない知識である。
そういってしまっては,おしまいだろうとも思いますが…。
巣に居候している計算盤に没頭する大蠅が出てきますが,妙に印象に残ります。
脇役なのに,変にキャラが立っているんですね。
ハヤカワSF文庫「シティ5からの脱出」に収録。
