非常にユニークでキャッチーなタイトルです。
If This Is Winnetka, You Must Be Judy
人生が時系列的に流れるのではなく,人生のある期間からある期間へと前後の順序なくスキップするという数奇な宿命を有する主人公ガース。
スキップした時点にいかにうまく身を処すことを第一に,その宿命を甘受していたのです。
しかし,あるスキップのとき,まだ,出会っていないはずのエレーンに思わず声をかけてしまいます。ところが,エレーンもガースを知っていたのです。ということは,実は,二人とも,同じ宿命の人間だったというわけです。
ガースは,エレーンから, 彼女が53歳で乳癌で亡くなったのは,受診をためらったためであったことを知らされます。
愛するエレーンとともに暮らす時間が何よりも大切だということに,今更ながら気が付いたガースの心からの思いが,人生は定められたものという受動的な考えを変えさせます。
エレーンも,またそうでした。
ガースは,彼のもとを去ったジュディを連れ戻すことをやめ,エレーンを飲んだくれの亭主から別れさせます。決まっているはずのことを変えることにチャレンジした彼らは.新しい世界を手にいれることができたのでしょうか。
個人的には,あんまりハッピーエンドは好みではないのですが,この作品はひねくれた心をもたずに,素直に感動を味わうべきものですね。読後感も非常によく、この世も捨てたものじゃないという気持ちになります。
トリッキーな構成ながら,私小説風な物語との違和感を感じさせずに,巧みにまとめあげているのは練達の筆遣いというべきか。
ところで,ガースは二度,エレーンは一度,互いに結婚をしくじった後で,めぐり合ったのだから,結構,熟年恋愛の話なんですが,こう,初々しく,爽やかに描かれているところに,私としては違和感を感じましたが。
⇒この記事を書いてから、20年が経って私もいい年になったせいか、ノスタルジックで渋めの甘酸っぱさは心に沁みますね。
新潮文庫「タイム・トラベラー」収録。
2010年に刊行された、「SFマカジン」創刊50周年記念アンソロジー全3巻の一冊のタイトル・ナンバーに選ばれています。

