われわれは不死の贈り物をたずさえてきた。このお返しに,きみたちに一つ,ささやかな頼みごとがある。
じつはある種の超時空的ジュニア・ハイスクールみたいなものが,未開惑星を実習課題にとりあげることになった。
つまり,<野蛮な世界のある一日>とでもいうか。というわけで申しわけないが,しばらく同じ日を何回も何回もくりかえしていただけまいか。すばらしい取引ではないか。いや,きみたちには何も打つ手はない。
ある日突然やってきた正体不明の異星人。
彼らは,太陽系を“時間の輪”に投げ込んだのであります。
いかにもたいしたことのない理由で,問答無用のえげつない挙に出て,果てには,恩着せがましい言葉さえ弄する傲岸不遜な連中。しかも,至極当然のような態度が極めて憎たらしいですねえ。
伊藤典夫氏の練達の翻訳にもよるのでしょうが,なんともとぼけたようなユーモアが漂っている不思議な作品であります。
それにしても,“しばらくの間”とは,どれくらいの長さなのでしょうか?
主人公の心の問いに,異星人は返します。
ああ,そんなでもない。きみたちの時間にして七百万年くらいだ。
なんぼ不死の贈り物をもらえるといってもねえ。もしかしたら,この七百万年が準不死の贈り物なんじゃあるまいね。
主人公は,売れない脇役俳優で,その朝,彼のもとを去ろうとした恋人と諍いを起こし,彼女のほっぺたをひっぱたいて,飛び出させてしまった…という朝の一幕から,何度も何度も繰り返す羽目になります。
彼は,毎日列車事故にあうという娘と知り合い,なんとかこんなループを抜け出そうと,必死の努力で,行動パターンを変えようとします。
そんな行動も織り込み済みとせせら笑う異星人ですが,主人公の突っ張りには共感するものがありまして,この不屈の闘志に“人類の意地”を感じるところであります。主人公の恋人に対する意地もね。
同種のループものでありますフレデリック・ポールの「幻影の街」と比較しても,あまり,陰鬱さ,陰険さというものがない作品です。どちらも救いがあるわけではないんですけれど。
