未知大学(Unknown-Univercity)応用強制学教授,ヘンリイ・ハッセルは,1980年のある日の午後早く,帰宅してみると,妻(35歳:美人)がうっとりと男の腕に抱かれているのを見てしまった。
ハッセルは,45口径のリヴォルヴァーを取り出すや,怒りの7分半で“タイム・マシン”を組み立て,1902年のフィラデルフィアへと現れた。
妻のおじいさんを射殺!して,戻ってみると,妻が依然として男の腕に抱かれているではありませんか。
「そうか,不貞の伝統か!」
1958年作のベスターのテンポのよい洒脱なタイム・トラベルものです。
まあ,洒落たセンスというのは,本当は原文でなきゃ味わえないのでしょうが,雰囲気はそれなりにつかめます。
ハッセル教授は,妻のじいさん,ばあさんを殺しても,妻がこの世から消えないことに憤激し,コロンブス,マホメット等々殺戮を繰り返します。
さらには,マリー・キュリーを訪れ,核融合反応を教え,パリが巨大なきのこ雲につつまれることまでやってのけます。
それでも,現実は変わらないし,やればやるほど,だんだん教授自体の実在が薄くなってきたような気がしてきます。
実は,1975年に死んだと思われていたレノックス教授もタイム・マシンを発明し,同じようなことをやっていたのです。
ハッセル教授のもとに現れたレノックス教授は言います。
人間が過去を変えたとき,それは自分の過去に作用するのであって,ほかの人間には関係がない。君も私もわれわれの過去を消去したのだ。
多元的な時間軸をふまえた面白い発想であります。
表現が個性的ですね。
個人個人の時間の流れを“スパゲッティ”になぞらえ,麺どうしが一緒になることはない,ただ,過去を消してしまった両教授は,複数の麺を自由にわたることが出来るスパゲッティ・ソースになってしまったと…。
短い作品ですが,機知と諧謔を惜しみなくたたきこんだクールなものに仕上がっています。
現実とは完全に浮遊したところでの“遊び”の楽しさが味わえて,なかなか好きな作品です。
