岩と荒地の惑星エーリス。
はるかな昔,星間戦争の末,疲弊した人類はこの辺境の惑星に細々と命脈を保っていた。
領主ジョーズ・バンベックは,彼と敵対するアービス・カーコロとの緊張関係の中,惑星コラリンがエーリスへと接近することに憂慮の念を抱いていた。
コラリンの「ベイシック」と呼ばれる高度な知能を有する爬虫類種族が来襲する時期がやってきたことを。
最近復刊を遂げたジャック・ヴァンスの傑作です。
異国風物誌作家というべきヴァンスさんの作品だけに,情景描写はなかなか見事なものです。
「竜」の造型もよろしい。
原種となった捕れわれ竜―
青い真珠色の体を,二本の脚で直立させ,よく動く二本の中央肢と,首のつけ根にもう一対の多関節肢を備えた生物である。
Takemanさんの記事にもありますように,旧版の口絵の方が原作の雰囲気をよく伝えております。新版は,トリケラトプスみたいですね。
エーリスの人間たちが,コラリンの「竜」たちを改良して,多様な戦闘用品種を作り出したのと同様に,コラリンの竜たちも,連れ去ったエーリスの人間を改良して,巨人などを作り出し,互いに死闘を繰り広げる。
気味の悪い設定が実に生き生きとした,おぞましい戦闘シーンを生み出し,よい効果をあげています。ここらへんは,ジュラシック・パークにも負けていません。
もう一つ,「波羅門」という人種が登場しますが,これもいい味出してます。
この連中のわけわからなさと高慢さと身勝手さとともに,結局利用されてしまったことへの歯噛みのシーンなど笑ってしまいます。
バンベックもカーコロも,「波羅門」を不条理な者どもと見ていますが,それ以前にこの作品も相当不条理です。
巨大な宇宙船で攻め寄せ,破壊ビームなど高度な大量破壊兵器を有しているベイシックが,なぜ,わざわざ,人類の品種改良版をしこしことこしらえて,“人力”でもって先陣をきらせる必要があるのでしょうか。
原種のベイシックが,気高く尊いゆえに,捕虜の恥辱に耐えることのかわりに,尊いあるじたることを棄てて,“別種の生きもの”となったとありますが,これはちょっとすごいですねえ。まあ,わけわからない「精神構造」を描くのが好きなヴァンスさんですから。
というわけで,面白いけれども,なかなか感情移入のしにくそうな登場人物(竜)が打ち揃っているからか,なんやこう重苦しいので,人気が出にくいかもしれません。
1963年度ヒューゴー賞短編部門受賞作なんですが…。
それにしても,マキャフリイの作品とは,全然視点が違いますね。まず,「竜」に愛着をもっているように見えませんものね。というか,竜のグロテスクさを描きたかったんだと。
物事のこうるさい整合や教訓めいたストーリーなど取るに足らないことではないか,異質なものを描きたいといっているかのようなヴァンスさんが私は好きですね。

