「埋もれた秀作をふたたび世に出したい」
私も、SFマガジンなどに訳載されたきりで、忘却されるのは惜しいなあと思う作品を紹介するのは楽しいですね。
こういう作品は、マイナーな作家のものが多いのですが、この傑作選に拾われた、コリン・キャップの「タズー惑星の地下鉄」は、まさに中村氏のコンセプトにドンピシャの快作です。
赤色光に照らされ、見た目もおどろおどろしい惑星タズーは、大量の強酸類を含む大気が荒れ狂い、砂漠の砂とあいまって、あらゆるものが腐食・摩耗から逃れられない、まるで地獄のような世界です。
ところが、こんな惑星に、200万年前には、宇宙への進出を図っていたほどの知的種族が存在しており、地下に遺跡が埋もれていることが発見されたため、調査隊が派遣されて駐留しています。
輸送用車両もあえなくダウンしてしまう極めて苛酷で異質な環境であるため、「異端技術部隊」にお呼びがかかり、タズーに赴いた隊長フリッツは、現地を司るナッシュ大佐から、まずは輸送手段の確保を命じられます。
新たに発見された地下に広がるトンネル状の遺跡を見たフリッツは、高度な文明を築いていた種族なら、これは「地下鉄」に違いないとの見立てにより、この巨大運輸機構を賄っていたであろうエネルギー源を解明して、再稼働を試みようとします。
「異端技術部隊」(Unorthodox Engineers)とは、人類の活動範囲が地球外へも広がってる未来世界で発生する、順当な科学的アプローチでは解決しそうもない問題に特化して取り組むユニークな組織です。
知識だけではなく、経験や勘を活かしつつ、リスクを恐れず無理難題に果敢にチャレンジするポジティブさは、ヤンキー気質を彷彿とさせます。
会話には、頻繁に、「気の利いた」アメリカンジョークを飛び交わさせる律義さも、ほほえましいところがあります。(この部隊を主人公とする連作は、アメリカ受けするかと思いきや、意外にもイギリスでの人気の方が高かったようですね。)
作者は電気技師だったということで、電気工事現場感のあるSFという雰囲気なのですが、何だか作者も嬉々としているような素朴な「センス・オブ・ワンダー」があって、読む方も楽しくなる、そんな魅力があります
巨大な地下鉄の動力を生み出す奇想天外な発電方法もバカバカしくてよろしいし、タズーの強烈な天候や通電し爆走する地下鉄をはじめ、ハチャメチャな物理現象をインパクトある「科学的」な物言いで幻惑させるのもよろしい。「圧電効果」って、どれくらいのパワーを出せるのかな。
1965年の作品で、SFマガジンの1976年2月号「ハードSF特集」に掲載されたものです。
この号は、コードウェイナー・スミスの「スズダル中佐の犯罪と栄光」、ベスターの「マホメットを殺した男たち」、ニーヴンの「銀河の「核」へ 」など 著名作が多く掲載され、そっちに目移りしてしまいますが、この作品の題名は何となく記憶には残っていました。
一見、即物的で、魅力的なタイトルでもないので、これまで読んでいなかったのですが、面白い作品であることが、あらためてわかりました。
新訳になって、より、こなれた訳文になっていることもあるのかもしれません。

