低軌道での地図作成飛行…たやすい任務のはずだった宇宙船「ムーン・シャドウ」がトラブルにより月面に不時着。
着陸の衝撃で船体はバラバラになったが,女性宇宙飛行士トリシュは,奇跡的に命をとりとめます。
かろうじて,水と空気を補給してくれる生命維持装置とその動力源としての太陽エネルギーを受け取るソーラー・アレイが無傷であり,携帯食料を確保できたことだけが救い?です。
彼女は,地球からの救助船が到着する見込みの30日間,生き延びるためにどうしたのでしょうか。
ともあれ,ソーラー・アレイを日光に当てなければなりません。
彼女は,決然と,日を求めて歩き始めます。
きわめてシンプルで,わかりやすい設定でありますが,実に力強い作品でもあります。
ところで,お日様の動きとの競争ということですが,さて,どれくらいの速度なんでしょうかねえ。
地球だったら,周囲4万㎞÷24時間で時速1700㎞ということでしょうか。 月での見かけの太陽の速度はどう考えるのかな。月の自転周期は約27日で周囲1.1万㎞だから,時速約17kmということでよいのかな。100mを21秒ということで,結構しんどいスピードですよねえ。眠る時間もあるし。もちろん,高緯度になれば,もっと低速度でよいでしょうが。
それはさておき,ハイテクの極致の象徴のような宇宙飛行において,生身の人間が「歩く」という,非常に根源的な手段で危機を乗り切るというコントラストが鮮やかです。
ただ,意見は別れるでしょうが,個人的には,主人公と姉との葛藤を筋に組み込むのはよいものの,姉の「幻」的な登場の仕方はやや違和感を感じました。
いや,筋が単純なので,多少,こういうことを付加しないと,「厚み」が出ないということは理解できますが。
クラークの短編「メイルシュトレームⅡ」では,月面での事故を回避するための方法は,管制主導となっていますが,この物語では,“自力”ということが主眼となっています。
それと,強烈な意志力を発揮させるのが“女性”というところに,特段違和感を感じないのも時代の流れなんでしょうなあ。