かつて人類の一族が地球に再入植し,他の惑星から,奴隷のように使役する種族を連れてくることにより,自らは,貴族として高みに君臨していました。
ところが,工業技術の労働者たる“メック”と呼ばれる種族が,突如,反旗を翻し,堅固な城砦を撃破し,ついにヘゲドーン城が,人類最後の城として残されるに至ります。
城内では,有力者たちが,議論を重ねます。
誇り高き一派は,これという打開策もなく,これまでの人類の生活のあり方に疑問を呈するクラグホーンたちは城を出る道を選びます。
そうこうするうちに,メックたちは,城攻めを敢行,ついにヘゲドーン城は落城を迎えるのですが…。
ジャック・ヴァンスの,ヒューゴー・ネビュラ両賞受賞の名作です。
舞台は,「竜を駆る種族」,「奇跡なすものたち」と同様,中世・戦国時代というところです。
お城を拠点の攻防というところも一緒,全般を覆う“戦いの虚しさ”さらには諸行無常を漂わせるところも,まあ,一緒です。
小道具もそれなりに彩を添えておりますが,私としては,“獣車”がちょっと現実離れした面白さを感じましたね。
労働の尊さをうたい,特権階級の没落を描いたともいえるこの作品,ヴァンスさんの信条も反映されているのでしょうか。
ところで,メックたちの叛乱の一原因ともなった,クラグホーンがかれらを故郷の星へと帰すことを約束したことについての責を問われたときのクラグホーンの言葉ですが,
「その大げさな非難はお門違いだ。わたしがどんな悪事をした。責められるとすれば,わたしが大きな試みをしすぎたということだけだ。失敗は悲劇だが,未来の杯の上に病みほおけた顔がうかんでいるのは,もっと悪い。わたしはヘゲドーンになり,奴隷を故郷へ返してやろうとした。わたしは選挙に敗れ,奴隷は反乱を起こした。さあ,もう何もいわないでくれ。その話題にはうんざりだ。」
人間,信念を持つと強いものですね。
講談社文庫「世界SF大賞傑作選2」収録。
