「SFマガジン」2025年2月号(第767号)は、創刊65周年記念として、オールタイム・ベストSFを発表しています。
2014年から10年ぶりとのことですが、オールドファンの私としては、その昔のオールタイムベストと比べながら、見ていきたいと思います。
1位、2位独占のテッド・チャンの実力、人気は抜きんでているという感じですね。
グレッグ・イーガンの、文系にも優しい3位「しあわせの理由」も上位定着の定番になっています。
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアも安定の強さ。「愛はさだめ、さだめは死」も入れて、3作が50位内ランクインです。
5位のグレッグ・ベアの「鏖戦」はハイランクに来ましたね。とっつきやすい作品ではないのですが、ベア渾身の力作で、壮大かつ密度・熱量の高さと、戦いの相手の異種族の異質さが尋常ではありません。酒井昭伸氏の翻訳も評判を呼びました。
ケン・リュウと劉慈欣が、それぞれ6位、13位と高順位でランクインしているのは、昨今、中国・アジアのSF翻訳が進み、広く知られるようになってきたことがわかりますね。
「フェッセンデンの宇宙」がベスト10を堅持しているのは少し驚き。現在、入手困難の表示が出ているのにね。
9位の「アルジャーノンに花束を」は、長編は39位。私は、基本的に短編が好みですが、例外的に、この作品は長編の方がよいと思うので、短編の人気が高いのは意外ですね。
ジーン・ウルフがトップ10入りとは渋いですね。国書刊行会のおかげです。
11位の「たんぽぽ娘」は日本での人気が特に高い作品。だけど入手困難というものでしたが、現在は、河出文庫にラインナップされているので、今後も息の長い人気が続きそう。
12位「冷たい方程式」は、かつてほどの「定番」の地位は譲りつつあるものの、世代が変わっても受け継がれていく作品であることがわかります。この作品をタイトルナンバーとする短篇集も装い新たに出ていますからね。
14位のパオロ・バチガルピの「第六ポンプ」は近来の名作。高評価で納得。長編「ねじまき少女」も50位内にランクインで、定評ある作家という感じかな。
オクテイヴィア・E・バトラーは河出書房が再発掘してくれましたね。
ジョン・ヴァーリイは「残像」が19位で最上位か…。「ブルー・シャンペン」も33位で、結構根強い人気ですね。個人的には、「PRESS ENTER ■」のように、あんまりヴァーリイらしさが薄い作品の方が好きなので。
ル・グィンの「オメラスから歩み去る人々」20位は、マイケル・サンデル教授が取り上げたことが効いているのかな。長編部門で「闇の左手」が11位と、逝きてなお女王の貫禄があります。
20位以下で気になるところ。
スタージョンが、「孤独の円盤」25位と「海を失った男」35位の2作がランクインですが、どちらも現在入手困難の印が。好きな作家の19位にランクしており、「スタージョンは健在なり」ですが、せっかくの作品リバイバルの流れが途切れないようにしてほしいですね。
スターリングの「巣」28位やカードの「無伴奏ソナタ」35位のような作品が長く残るのはうれしいですね。ゼラズニイも何とか踏みとどまっているという感じです。
コードウェイナー・スミスは、短編では「アルファ・ラルファ大通り」のみ。1998年、2006年9位の「シェイヨルという名の星」はランク外か…。短編が3分冊にまとめられて出ていたのにね。長編は「ノーストリリア」(28位)ががんばっています。
エリスンは、「死の鳥」しか入っておらず、順位も38位といまいち低かったですね。「世界の中心で愛を叫んだけもの」しか出ていなかった短編集が「死の鳥」、「ヒトラーの描いた薔薇」、国書刊行会から「愛なんてセックスの書き間違い」、そして、「危険なヴィジョン」完全版が出るなど、それなりに話題があったはずなんですが。
バラードは2作(もう一作は「時の声」)入っているのは上出来だと思いますね。
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1989 |
1998 |
2025 |
作品名 |
作者 |
|
|
|
1 |
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|
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2 |
息吹 |
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|
3 |
しあわせの理由 |
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|
1 |
1 |
4 |
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23 |
5 |
鏖戦 |
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6 |
紙の動物園 |
ケン・リュウ |
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4 |
4 |
7 |
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6 |
8 |
フェッセンデンの宇宙 |
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5 |
3 |
9 |
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|
10 |
デス博士の島その他の物語 |
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14 |
8 |
11 |
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2 |
2 |
12 |
||
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13 |
円 |
劉慈欣 |
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|
14 |
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15 |
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|
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16 |
理解 |
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17 |
良い狩りを |
ケン・リュウ |
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18 |
オクテイヴィア・E・バトラー |
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|
10 |
26 |
19 |
残像 |
|
|
|
|
20 |
オメラスから歩み去る人々 |
|
|
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|
25 |
孤独の円盤 |
|
|
|
|
28 |
||
|
|
|
30 |
||
|
18 |
37 |
35 |
||
|
|
37 |
37 |
アルファ・ラルファ大通り |
|
|
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14 |
38 |
死の鳥 |
|
|
|
|
40 |
30年も経つと、入れ替わりが大きいのがわかります。
1989年、1998年の上位にあったものの、今回は、はかばかしくなかったものをピックアップしてみました。
クラーク、ハインライン、アシモフ御三家の退潮著しく、かろうじて「太陽系最後の日」が26位に残るのみ。巨匠のネームバリューや、SF史的に記念すべき作品などの価値が、年数の経過により、思い入れのある人も減ってきて、グリップする力が衰えてきたのかな。
ラファティは、どうしても票が分散してしまうのでしょう。
同じく、P・K・ディックも、短編ではランクインなし。
シェクリィ、ニーヴンも圏外となってしまいました。
|
1989 |
1998 |
2025 |
作品名 |
作者 |
|
3 |
7 |
21 |
愛はさだめ、さだめは死 |
|
|
6 |
10 |
|
||
|
7 |
26 |
|
人間の手がまだ触れない |
|
|
7 |
46 |
29 |
||
|
9 |
5 |
26 |
||
|
11 |
21 |
|
九百人のお祖母さん |
|
|
12 |
13 |
|
||
|
13 |
12 |
|
||
|
16 |
19 |
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