惑星シェイヨル。
はるか彼方に所在する,この流刑の星では,「補完機構」からも見過ごされた状態で,送り込まれた“一級の”囚人たちの奇妙で苛酷な日々が、永劫のごとく続けられていました。
星に降り立つ囚人たちにまとわりつくのは,シェイヨル固有の「ドロモゾア」という生き物?(寄生体?)。
ドロモゾアは,激烈な苦痛を与えるものの,宿主の生命維持に細心の注意を払い,そのため,ほぼ不死という,ありがたいようなありがたくないような恩恵を与えています。
そして,手や足や頭…等々,多様な体のパーツが,囚人の身体に鈴なりに実り,この星の管理人である牛人ブ・ディカットが頃合をみて収穫,いずこかの世界へと供給されています。
囚人たちにとっての唯一の救いは,ドロモゾアに侵された人間であれば耐えることのできる,極めて強力な麻薬スーパー・コンダミン。
時折,ブ・ディカットから施される、この麻薬の注射のみが,すべてを忘れ快楽に浸れる至福の時をもたらすのです。
メルヘンチックな装いではありますが,何とも,残酷でおぞましく哀しいお話です。
脱出できる見込みなど皆無であるばかりか,囚人たちにも全くその意志もない。
苦しみを忘れるための快楽中枢への刺激だけが生きがいというのも切ないし,そんな自分への自己憐憫さえなくなってしまっている姿が,救いのなさを感じさせます。
そんなある時、あまりにも悲惨な囚人がシェイヨルに送られてきた事件をきっかけに,シェイヨルの存在が「補完機構」に知られることとなり,事態の是正が速やかに行われることになります。
でも,これは単純なハッピーエンドでもありません。自由の身になっても、シェイヨルに残ることを選ぶ者さえいます。異質な存在と成り果てた者の哀れさがひしひしと伝わってきます。
この作品は,作者の作品におなじみの,肉体に対する「イタい」仕打ち,精神解放へのあこがれのようなものが強烈に発現しているとともに,「地獄」を,奔放な想像力をめぐらせて、作者独自の世界に料理しなおした素晴らしい作品です。
おとぎ話風であることで緩和されていますが、ラジカルであぶないところも魅力であり、作者の只者で無さも感じられます。
あのスズダル中佐もこんなところに登場します。
