レーガン大統領の崇高なる決断の下,大統領の生体解剖を実施し,各器官を再生培養し,第三世界をはじめとして,各種用途に供給するという,実にシュールな内容のお話です。
初出はイギリスのSF雑誌「インターゾーン」でありますが,こんな話ですから,掲載への非難,抗議が相次いだということです。
まあ,確かに悪趣味といいますか,えげつないといいますか。
レーガン氏を麻酔なしで切開し,皮膚・筋肉組織を切り取り,内蔵を摘出し,四肢も切り離す…そんな手術の様子を外科医的な客観的見地でもって,淡々とリアルに描いておりまして,それだけでも血のきらいな方は気持ち悪くなってしまうでしょう。
人体を純粋に「モノ」である器官の集合体のように取り扱っているところが,いっそ清々しさを感じさせるほどです。
レーガン氏は,頭部と呼吸器と心臓以外を全摘されながら手術後も生存するということなのですが,これは再生培養された器官を順次復元していくということなのでしょうか。
こんな目にあってでも手術にのぞませる動機となったものは,贖罪のようでありまして,さらりとしか書かれていませんが,その不可解さも異様であります。
手術後,気管のチューブを外され,声を出せるようになったレーガン氏が,空前絶後の苦痛に絶叫するという有様は,あまりのことに笑えてしまいますな。
苦痛を感じないように脳への感覚神経をあらかじめ切断しておけばよかったが,これも術後にわかったことだのと,人を食ったようなずれた感覚もブラックユーモアというべきか。
レーガン氏が絶え間ない激痛を感じていなかったといえば嘘になる。皮膚を切り身にされ,胸を割られ,手足をこまぎれにされたあげくに切断されれば,誰だって激痛にさらされるだろう。…生き延びたというのは,かれの強靭さの証拠であるが,術後の金切り声や抗議はまだ耳に残っている。もちろん,すでに上肢は切除してあったから,目から流れる涙はわれわれがぬぐってやらねばならなかった。
似たような趣旨の短編で,筒井康隆の「問題外科」というのがありまして,これも相当エグい内容ですが,「器官切除」は,故意に読者に嫌悪感をもたらそうというのではなく結果として自然とそうなったように思える点,かえって異質な不気味さがただよう異色の作品となっております。
それにしても,年の瀬も押し迫って読むべき本でもありませんね。
