ポータルズ・ノンストップ~コニー・ウィリス④

 「フォート・サムナーにビリー・ザ・キッドのお墓がありますよ。ここからだいたい七十マイルですね」

 ぼくはといえば、はるばるアリゾナ州ビスビーから車を運転してきたばかり。いま一番やりたくないのは、また車にもどって百四十マイルの距離を往復し、名前の消えかけている歪んだ板切れの墓標を見物することだ。

 カーター・スチュアートは、ぱっとしない発明品のセールスに、田舎のどさまわりを続けています。

 太陽熱発電灌漑装置、水質保全装置になんぞ、ここらの農家はてんで興味を示さない。

 今日は、ニューメキシコ州のポータルズまでやってきたが、唯一の顧客が明日まで会えないということで、丸一日空きの時間をどうつぶそうかと思案していたところ、こんな何もなさげな町に、バスツアーの一行が。

 ひょんなことから、そのツアーに参加したカーターは、当地に住まうジャック・ウィリアムスンのゆかりの地を巡ることになる。何で、こんな名所めぐり?に、他の参加客は興味津々で、満足しているのだろう?

 定番の通り、タイムトラベル・ツアーのお話ですが、SF界の長老、ジャック・ウィリアムスンへの敬意を軸に、うら寂れた田舎町の光景をバックに、可愛らしいツアー・ガイドとのひと時の交流を通じて、主人公がもう一度未来への展望を見い出すという、なかなかポジティブで、軽快・達者なストーリー展開を楽しめます。

 「小粋」なお笑いトークが頻出しますが、これはサービス精神旺盛なコニー・ウィリス女史ならではというところでしょう。

 こんなツアーといえば、「ヴィンテージ・シーズン~C.L.ムーア①」が思い起こされますが、そんなシビアで強烈なものではありません。参加者も善良な一般市民でいじらしいくらいですからね。

 ツアーは過去が改変されないよう、ジャック・ウィリアムスン本人は無論、家族も町を出払っているときを狙って行われていますが、カーターをツアーに参加させちゃうのはどうなんでしょうねえ。

 それとも、未来のためには、カーターの発明が実は必要であったとか。ツアーもカーターがこの町を訪れるタイミングを狙って組まれているのかもしれませんね。

 コニー・ウィリスのブログで、ジャック・ウィリアムスン・サイエンスフィクション・ライブラリの記事があります。http://azsf.net/cwblog/?p=169

願い星叶い星~ジャック・ウィリアムスン①