いまから1600年前,宇宙に戦争の嵐が吹き荒れたころ,拠点を破壊された一団の宇宙船の船長たちが,パングボーンに避難所をもとめた。
執念深い敵から身を守るため,彼らは大城砦を築きあげ,そこに宇宙船からとりはずした火砲を持ち込んだ。やがて戦火は衰え,パングボーンは忘れ去られた。
彼らの子孫たちは,“先人”と呼ばれる原住種族を彼らの棲息地を奪う形で進出していき,城砦を根城に,覇権をめぐっての争いが続いていました。
なかでも,"ファイド卿"が最も強大で,最大の敵"バラント卿"と雌雄を決せんとバラント城に攻め入ろうとしております。
彼らには,咒法師の一団が随伴しておりまして,テレパシー能力を駆使して,敵兵士に念を送って“火傷”を負わしたり,“鬼神”を憑依させ不死身の戦士に仕立てる…つまり,高度な暗示能力を職業としている専門家集団というわけですね。
我々から見たら,そちらこそ魔術的なものに見えるところですが,彼らは,精緻な理論・技術を基盤にしたものと自負しており,むしろ,巨大な宇宙船を飛行させ,火砲を自在に操作していた先祖こそ,ありえない“奇跡”を魔法のようにやってのけた不可思議な連中であり,それを再び指向するなど,“退化”であるとすら考えているのであります。
このような条件設定のもと,やや陰気系の"ファイド卿",貫禄と茶目っ気ある鷹揚さをあわせもつ咒法師長ハイン・フス,その配下に加わる若き異端気味の咒法師見習いサラザールを中心として,“先人”の逆襲もからめまして,物語は展開していきます。
翻訳者の酒井氏が解説で述べられたとおり,咒法師の働きを前面に出した迫力ある戦闘シーンには思わず没入してしまいますが,しかしながら,単なるチャンバラものに終わらないのは,ややパターン化しているとはいえ,重畳的な設定と,人物造形の巧みさ,“異星情緒”たっぷりの舞台装置のおかげでありましょう。
それに,全体を通じての,若干陰鬱でシニカルなトーンですかねえ。
ラストは,まあ,ハッピー・エンドかな。
苦笑という雰囲気ではありますが,読後感はよろしいと思います。
ところで、酒井氏は,奇怪な味の漢字が好きですね。「咒」なんて,まず,お目にかからない漢字ですね。(「SFマガジン」もルビをふらないものだから,この字を簡単には探し出せませんでした。)
