殺人ブルドーザー~シオドア・スタージョン⑤

 とある島の飛行場建設のための土地造成のためにやってきた建設作業員のグループと建設用機械群。

 小山を切り崩している途中で,未知の石室を動かすと,太古からよみがえった得体の知れない生命体が最新鋭のブルドーザーに入り込み,一体化して,人々に襲いかかってきます。


 スタージョンの傑作とされながら,これまで未訳でしたが,創元文庫「地球の静止した日」に収録されました。

 読んでみると,スタージョンのブルドーザー運転の実体験に裏打ちされているため,メカの作動の表現がかなりマニアックなんですね。

 おそらく,スタージョンさんは,この手の機械に愛着をもっているのでしょう。 なんか,うれしそうに書いている感じがします。

 ともかく,細部にわたる言及があることで,異様にリアルな迫力が出ているし, もちろん,スタージョンさんだけに,細部に埋没することなく,躍動感を損なわずにまとめられています。

 主人公の現場監督のトムは,この “殺人ブルドーザー”に,47tもの巨体のショベルカーで応戦します。まるで「オートマ」と「マニュアル」の対戦のようでして,建設機械操作のエキスパートの意地と誇りをかけた勝負は,なかなかに興奮いたします。

 「見てろ」トムは歯をくいしばり,巨大なディーゼルエンジンのところへ行った。検油棒でおもむろに燃料をチェックし,棒を戻すと,ガバナの遮断棒を収納庫から取ってガバナのケーシングに差しこんだ。マスター・スロットルを半開にセットし,始動ハンドルを引きあげ,遮断棒をぐいと引く。エンジンはフードつきの排気筒から青い煙のかたまりを吐き出して始動した。

 考えてみれば,よくある構図ではあります。パワースーツに身をつつみ,強力なエイリアンと戦うような。

 機械を自在に動かして,生身ではとてもできないようなことを可能にすることに対する快感は,道具を使用してきた“ヒト“の本能によるのかもしれません。

 スティーブン・キングの「トラック」という短編でも,突如,意思を持った自動車たちが人間に襲いかかるという同じような筋のお話ですが,メカの現実味に焦点を当てたスタージョンさんの方が私は好みですね。

 それだけでなく,個性(癖)ある人物の配置とお決まりのうちわもめ,擬似”科学的“解決方法など(いかがわしさが楽しい),肉付けもほどよく,総体としてよくできた作品であると思います。

 それにしても,スタージョンさんの作品は,いろいろと毛色の変わったものがありますね。