バーナス鉱山全景図~ショーン・ウィリアムズ①

 鉱山の奥深く、わたしの足の下でゆっくりと自転しているのは、一つの惑星だった。
「こんなこと、ありえない」途方もないエネルギーが大陸サイズの岩の塊を切り出す様子に、わたしは息を呑んだ。視点はかなりの高度で—少なくとも三万メートルはあり—その光景はまさに壮観だった。
 
 失踪した兄マーティンの行方を追って、とある惑星の大鉱山へとやってきた主人公。
 この「バーナス大鉱山」は、かつて異星人が開発し、人類によって再発見されたもので、無尽蔵ともいわれる莫大な鉱物を掘り出し、搬出するため、数多くの人々が従事しています。
 主人公は、鉱山部長のカーナヴォンに面会しますが、カーナヴォンは、兄を探すための案内と協力を申し出て、その職を部下に委ね、自ら主人公に同行して、何層にも連なる鉱山の地下へと下りていくことになります。
 階層を下るにつれて、鉱山の異様さが増していきますが、鉱夫たちは黙々と作業にいそしんでいます。カーナヴォンいわく、バーナス鉱山で、人は何かに「囚われる」と。
 さらに進み第5階層では、途方もなく巨大な空間に、火星ほどの大きさの惑星が浮かび、その採掘に従事する250万人という人々の居住区が「層」の天井に張り付いているという世にも不思議な光景が広がります。
 この第5階層で、主人公は、兄を知る人物に出会いましたが、依然として消息は不明のままです。カーナヴォンは、鉱山には、「監督」と呼ばれる未知のものが存在しており、年間300人が姿を消し、その3倍以上の者が殺されてしまうと打ち明けますが、「監督」は、異星人なのか、彼らが残したものなのか、何の目的があるのかも何一つわからないと言います。
 マーティンはこの居住区に滞在していましたが、ここから忽然と消えたようです。
 そのうちに、カーナヴォンが行方不明となったという噂がたち、主人公は、単独でさらなる深奥の層へと向かうのですが・・・。
 
 宇宙から遠ざかるように地下に潜っているのに、現れる光景は次第に宇宙的になっていく様子を大変面白く読みました。 
 階層を下るごとに、異次元の奇妙で壮大な情景が繰り出され、兄のたどった道を追って真相を探ろうというミステリアスな展開を紙芝居のように楽しめる作品です。
 読者は、主人公と同化しながら、鉱山を下っていくことになりますが、肝心の兄がどうなったかについて、思わせぶりなカーナヴォンの説明に、主人公ともども、もどかしく、いらいらが募っていきます。
 かなり気を持たせるような引っ張り方なので、カタルシスを得られる結末でないと欲求不満のままに終わるなと心配しつつ読み進めることになりますが、なかなかに健闘していると思いますね。
 謎を曖昧なままにしすぎだと消化不良ですし、あまりに律義に謎解きをしてしまうと、期待外れになりかねないジレンマもあるでしょう。
 物理的な答えを提示するというよりも、どんな未知の世界であっても、危険を顧みず、好奇心をもって探究に乗り出す、人間の持つ本質は、時空を超えて何でも創造できるということを抽象的にビジュアル化して折り合いをつけたという感じですかね。
 ちょっと「2001年宇宙の旅」のような不思議な感動を味わえる作品です。