アメリカSF界の長老,ジャック・ウィリアムスンが,11月10日にお亡くなりになったそうであります。享年98歳の大往生ということです。
「宇宙軍団」,「航時軍団」等,名前は知っていても,読んだことがありません。
短編も,わずかに2編だけ。
ハチャメチャの「火星ノンストップ」もよいのですが,中年男の哀愁と願望充足のお話である「願い星叶い星」をご紹介します。
しがない帳簿係のピーポディさんは,ワンマン社長の労働強化にへとへとの毎日。給料も冴えなくて,自由になるお金などありやしません。
息子のウィリアムは,今でいう“ニート”という状態。おやじさんの言うことも聞かずに,月賦で勝手に車を購入したうえ,事故ってしまうという体たらく。
奥さんは,一見良妻のようですが,たまに,欲しいものがあれば,何としてでも手に入れようという意思の持ち主。
娘のベスだけが,ピーポディさんの心の支えともいうべき存在。
奥さんのドレス購入騒動から,ウィリアムの身勝手な言い分,さらには,ピーポディさんの秘蔵の釣り道具を勝手に質入するにいたって,ピーポディさんは,キレてしまい,戸外におん出るのであります。
泣く泣く流れ星に奇蹟を願うピーポディさん。
すると,彼の方向に一直線に流れ星が飛ぶや,眉間へと!
なんかもう,安っぽい,家庭ドラマのような筋書きです。
でも,ハンで押したようなものであるがゆえに,なんか,安心して読めるんですよね。
脳みそにはまった流れ星が,無から物体を作り出す能力を付与するという,“サイババ”のような,驚くべきいい加減な展開は,いっそ爽やかであります。
「あなたがお聞きになると言われる耳鳴りのような音は宇宙空間の自由輻射エネルギーの感覚に間違いないと思います。あの放射性の石は,ある方法によってあなたの脳に―おそらく,わたしたちのなかで一番未発達な心理物理的能力を刺激することによって―あなたに,その分散したエネルギーを集中し,物質の原子に変換する力を与えているのです。」
どうです,このいかがわしき科学?理論は。
全体に,フクザツでない時代だったんだなあという印象でございます。
でも,読み心地はよろしいです。
ご冥福をお祈りします。
創元推理文庫「マイ・ベストSF」収録。

