彼女は「スネーク」と呼ばれる,うら若き蛇使いの治療師。
「草」は,赤んぼうの指の太さしかないかわいらしい蛇。
「砂」は,ガラガラ蛇。
「霧」は,コブラ。
「草」は,死から病人を守る役割を,「砂」と「霧」は,病気を治癒させる抗体を生み出す力があります。
とりわけ,「草」は,夢をもたらし,死の恐怖を取り除く,貴重な蛇なのです。
「スネーク」は,この三種の蛇を使いこなす修練を経た呪術医といったらよいのかな。
病からの助けを求める声に応じ,村から,村へと,旅を続けます。
この物語は,簡単に言えば,ある村での,腫瘍に侵されていたスティーヴンという名の少年を救う話ですが,この村の重苦しい閉鎖的・排他的コミューンの中で,「スネーク」が,アレヴィンという名の青年,もちろんスティーヴンとも,心の交流を持ちえたというものです。
ただし,このために「スネーク」は,大きな代償を払うこととなるのですが。
時代設定も,場所も,具体的に明示されていません。
いったい,どの時代の,どの場所のお話なんでしょうか。
砂漠の中に村々が点在し,機械らしきものがなく,全体として,荒涼たる雰囲気の中で,人々が不安と不信のうちに暮らしています。
そんなイメージからは,未来の核戦争後の世界,機械文明がいったん崩壊してしまった世界のような気がします。
「スネーク」たちの気高く尊敬に値する職業と,その無私の行為。
何か,隠された本来の目的があるのでしょうか。
「草」は,一体どういう存在なのでしょうか。
この作品は,1974年度ネビュラ賞ノヴェレット部門の受賞作ですが,長編「夢の蛇」(ハヤカワSF文庫)の第一部となっています。
私は,長編版を読んでいないため,物語がどのように展開するかを残念ながら知りませんが,第一部だけでは,ちょっと見当がつかないですね。
長編版は,ヒューゴー,ネビュラ,ローカスのトリプル・クラウンを受賞しているだけに,読まなきゃ良かったということにはならないとは思いますが。
不思議な世界へと読者を引き込んでいく,細やかな語り口が印象的な作品です。
「SFマガジン」1975年9月号掲載。
ところで,先日13日に,東京コミックショウのショパン猪狩さんがお亡くなりになったそうですが,三匹の蛇使いといえば,この人を思い出しました。
「レッド・スネーク,カモン!」
