雪だるま効果~キャサリン・マクレイン①

 大学の社会学部主任教授のウィルトン・カズウェル博士は,大学の経営に頭を悩ます新学長から,博士の研究が役立っている(つまり金を吸い寄せることができる)ことを立証するように求められました。

 博士は,彼の研究テーマである「組織拡大の一般成長公式」(雪だるま効果)を実証するために,ある小さな組織に一定の動機付けを行ってテストを実施することとしました。
 
 目をつけられたのは,"ウォタショウ裁縫サークル"
 博士と学長が,この小さな町の30人ばかりのサークルを訪れたとき,メンバーたちは,中古衣料を縫い直して不幸な人たちに送るという問題について,だらだらと議論を続けていました。
 
 博士は,天性のリーダーとも思える女性に,組織成長の極意を吹き込んだのです。

 「新会員の加入がとぎれずにつづいているかぎり,会員には多くの輝かしい利益が保証されている」

 4ヵ月後,町の公会堂を埋め尽くした群集。

 裁縫サークルは,"ウォタショウ市民福祉連盟"に改組し,さらに合併を重ね,名を変えつつ,拡大していきました。実験は大成功。

 しかし,教授は,組織成長の負の要素を加味していなかったのです…

 いわゆる「ネズミ講」が世界を征服してしまうユーモアストーリー。
 世間で,ときどき思い出したように発生するネズミ講は,いずれ破綻し,代表が会費をドロンするのがお定まりだが,本作品の組織はなかなか足腰がしっかりしています。

 看板はご立派な利益誘導型組織が,様々な思惑をもった有力者を次々と引き入れながら増殖し,大きな政治的発言力をも得ていく様は,いかにも巷にありそうな話です。

 もちろん,組織の末端にいる人がさほどのメリットを受けるわけではありません。
 学長が,"ウォタショウ裁縫サークル"のリーダーに「極意」を吹き込む際に,博士に語った言葉がすぐれものです。

 「図々しい人物がどれだけ個人的に得をするか,ただそれに触れてやればいいんだよ」

 講談社文庫「世界ユーモアSF傑作選2」収録