豚の飼育と交配について~レックス・ジャトコ

 植民惑星アーマイン。

 三年前に惑星全土に猛威を振るった変異ビールスにより,ほとんどの人間が死滅してしまっています。

 生き延びたロイと妹は,農場でひっそりと暮らしていたが,ある日惑星の首都から,ジョンという男が女性を数人引き連れてやってきます。

 この災禍に生き残ったジョンの集団は,20人あまり。そのうち男性はわずかにジョンとスティーブンスという70歳をこえた老人だけ。

 ジョンは,ロイを説得します。

 このビールスは,植民惑星のどこから発生したものかわからない。
 すでに,地球もビールスに侵されており,もしかしたら,われわれだけが,人類の最後の生き残りなのかもしれない。
 種を保つことが最も大切なことではないかと…。


 貴重な存在である男性。
 種族保存の目的のために,重婚を重ね,生めよ増やせよ作戦の遂行。

 人類の新たな始祖となるといえば,言葉は良いが,やっていることは,まさに,種豚といっしょ。

 ジョンの表情も,どこか暗い。ロイを発見して,わずかにほっとしたところか。
 少なくとも,“近親交配”を避けることが可能になったと。

 スティーブンス老人によれば,ここの女性たちは,ジョンが,無線で生き残りに呼びかけたところ,様々な艱難を乗り越えてやってきた,年端もいかない子供たちが多かったといいます。
 それだけ,たくましく,鉄の意志をもったタフな女性たちなのです。

 老人は,ロイに語ります。

 「われわれには新しく一つの世界を作ることはできない。そんなことを望む方が無理で,やっても無駄だ。そんなことをする道具はない―でも,その道具を作ることはできるのだ。その道具とは人間だ―人間の集団だ。」

 ロイは,逃げ出したいが,逃げ出せそうもありません。

 ジョンは,ロイの妹のアマンダを17人目の妻に迎えます。
 そして,ロイも,結局は、この集団生活に加わることとなるのです。

 一見,ハーレム的な生活をうらやましいと思うと大違い。

 人類再興という重い使命を背負って,注意深く,綿密に,慎重に,繁殖計画を立てて実行していかなければなりません。

 異様なタイトルからも感じられるように,崇高な使命という建前と現実とを,冷静,そして少し皮肉な目で見すえた,なかなかに読ませる好編であります。

 スティーブンス老人の言葉が,結構,心に響くんですよね。

 農場で豚を飼育していたロイが,ジョンから,「われわれは貴重な雄豚だ」
と言われる展開,そして,最初の結婚を決意したロイが,新婚初夜に寝室へと携えていった本の題名…と,奇妙なタイトル名がしっかりと回収されています。

 折り目正しい作品といえましょう。

 1955年の作品。
 講談社文庫海外SF傑作選「破滅の日」収録。