惑星ノーマの赤道をぐるりと一周する巨大な空っぽの建造物。
これは,遥か昔銀河系に君臨した先住種族コルレヴァリュローの残した不思議な遺物であります。
文字を不要のものとしたコルレヴァリュローの痕跡を認めることができるのは,そこかしこの限りない惑星に残された途方もなく古くて目的のうかがい知れない建造物だけで,彼らがいずこに行ったのかさっぱり見当もつきません。
ノーマのだだっぴろい建物は,膨大な数の品物を収容する,人類の「宇宙史博物館」に利用され,日々,多量の物品が運ばれ,分類されています。
主人公は,最上級の「統合」の能力を有する数少ない探求者の一人。
彼は,6万5千年前の惑星スカンドラをめぐる運命に巻きこまれた一組の男女のホログラム発生装置に興味を持つのでありますが…。
まず,何と言っても,このホログラムどうしの会話という設定がうまいです。
全滅させられる側の元妻と,攻撃に向かう宇宙船の乗組員である夫それぞれのメッセージを内蔵したホログラム。
ホログラムを互いに向かい合わせることにより,6万5千年ぶりにお互いを認識し,会話が始まります。
しかし,そのホログラムの作成時期が異なること,会話ストックが限られていることから,ホログラムどうしの会話が,妙にかみ合わないまま,ループを描くように、果てしなく続いていきます。
ほんと見事な発想です。ちょっとグロテスクさも感じるブラックな味わいですね。
ふと,主人公は,わが人類も,このホログラムのように先住種族の意識の投影に過ぎないのではないかという幻想にとらわれます。
能力の限界が見え,新たな進展も望むこともできないまま,最後のときまで繰り返される意味を見出せない行為とでもいいますか。
博物館というのも,すでに過去に視点が向いており,博物館が満杯になったら人類としてのお役目は終わりというような皮肉な意味づけをもたせているような気もいたします。
パーソナルな事柄を扱いながらも,途方もない広がりをもつ宇宙の虚無と人類の所業の無常さ(ちょっと大層かな)を感じさせてくれる好短編で,私のお気に入りです。
「SFマガジン」1982年12月号掲載。

