系統発生~ポール・ディ・フィリポ①

 宇宙からの侵略者のため,生態圏が根本的に破壊され,修復が困難になった地球。
 人類は,遺伝子操作により,異質の環境に新しい人類を適応させるべく,必死の努力を重ね,新しい形態の人類をつくりだした。

 そのモデルとなったのは,“ウィルス”であった。


 この作品には,一読びっくりいたしました。
 遺伝子情報をため込んだ小嚢が,宿主を求めて,宇宙空間をさまよう。
 首尾よく,宿主に遭遇し,侵入できたものだけが,繁殖し,子孫を残すことができる。

 人間らしさは残しているものの,ウィルスと同様の生き方をしている新人類の姿を、特に感傷的になることなく、実に客観的に淡々と描いております。とんでもない形態変化なんですけれどね。

 まさに,生きながらえて,人類としての種を存続させる,そのことだけに全力を集中する,その,あまりの潔さというか,苛酷な運命を甘受している様子は,大げさに言えば,価値観が揺らいでしまいそうです。

 宿主にめぐり合うチャンス,めぐり合っても子孫を残せるかどうか,そんな当たるも八卦,当たらぬも八卦のようなウィルス人生・・・。

 何とも辛く哀れな生き方といっても,それは,ぬくぬくとした母なる地球に安住する我々の価値観なんでしょうね。この未来人たちは、今を生きることに全力を尽くし、それを不幸とは思っていません。

 「生殖」と「増殖」の繰り返し。
 さすがに,配偶者との再会など、少しは人情味あるエピソードを入れながらも,所詮は,そんなものお飾りに過ぎないというような,作者のニヒルさを感じます。

 でも,こんな“ウィルス人類”―
 このたくましさを見る限り,けっこうしぶとく生き残ると思います。
 それにしても,遭遇確率の低そうな,宿主を当てにするより,地球型惑星を目指すべきでありましょう。