筋肉男のハロウィーン~レイ・ブラッドベリ①

 ほれぼれするような肉体をもち,毎晩,一人黙々と筋力トレーニングに励む30男。

 本も新聞も読まず,ラジオもレコードも全く聞きません。

 交際相手もおらず,たまにかかる女性からの誘いも,何かと理由をつけて断ってしまいます。

 町のティーンエイジャーからは,賞賛の眼差しを受けるが,彼らも,やがて年相応の世界へと離れていきます。

 彼だけが,いつまでも,その世界にとどまっているのです。

 母親は,息子への愛情とともに,いつまでも人並みになってくれないことへの焦燥感がつのります。
 そして,ある怖れも・・・。


 ハロウィーン・パーティーを企画する息子だが,これは間違いなく白ける結果となるだろうと予測させるような展開。

 案の定,欠席が続出し,行くのを渋り始める息子に,「楽しんでいらっしゃい」と送り出す母親。

 そして,予想通りのつまらないパーティーから戻り,夜中に,トレーニングを続ける息子。

 これだけでも,鬱陶しく,息苦しい話なのに,さらに,これから起こることを考えたくもないような結末。

 息子の手の中で収縮を繰り返す,鋼鉄のトレーニング・スプリングの音がやむとき,収縮の動きで,かろうじて押さえられていたものが,制御できなくなったとき…

 ああ,嫌な話だ。

 でも,うまい。
 これだけ,効果的なほのめかしは見事ですね。

 じっとりと汗ばむように,皮膚に粘りつく,異様な不快感というか嫌悪感は,出色。

 ブラッドベリは,こんな、やや変態的なものも書くのですね。
 一本,とられた感じです。

 原題は“Heavy Set”,邦題は,なかなかすごいですね。

 文春文庫「筋肉男のハロウィーン」収録。