空間の大海に帆をかける船~バリントン・J・ベイリー③

 リムってやつは,ちょっと温度をみたいとばかり地獄の釜にも平気で首をつっこむような人間だ。

 これはまあ,あほらしい設定にがっぷり四つに組むベイリー先生そのものではありませんか。

 リムさんは,太陽系でもトップクラスの物理学者というのに,素行不良により,海王星くんだりで,お茶をにごすようなチャチな仕事についているというありさま。

 そんなある日,リムと私が発見したのは,虚空に浮かんでいるかに見える,長さ半マイル,最大幅がその7分の1といったところの奇妙な代物。

 で,この物体には「質量」がないという。リムさんは,無謀にも,この物体に爆薬で穴をあけて,中に入ろうと画策します。

 「空間だ。空間があの穴のなかに流れ込んだんだ。あのなかには空間がなかったんだ。いいか。おれたちはひとつ利口になった。空間は液体と同じ性質をもっている」

 利口になったのかどうかはわかりませんが,この船底のようにみえる物体をリムさんが爆破したところ,船に空間が侵入し,船が沈むという,わけのわからない事態が生じてしまいます。

 相変わらずのベイリーさんですが,やっぱり面白いですね。
 「なんじゃこれは」といういい加減さがたまりません。

 私には,被害者である船客たちもかわいそうというよりは,同じようにバカやってるような気がしてなりません。

 物語の終りの決め文句も,あながち,洒落ばかりではない,みんなエキセントリックで同じ土俵に立つ連中だったら,真実味さえ帯びているじゃありませんか。

 「おれはまだ立ち直れねえよ。空間が重い液体に相当する生き物なんてな!連中の飛行機というやつを見てみたいもんだ」

 「うーむ」おれは答えた。「それよりやつらが潜水艦を思いついたら、いったいどうする?」