「BLIT」とは,何でしょう?
ベリーマン・ロジカル・イメージング・テクニック…数学者ベリーマンが完成させたおぞましい“画像技術”のこと。
数学は仕掛け爆弾になりうる,というところかな。どんなコンピュータにも,クラッシュさせ,うんともすんともいわなくさせられる特定の問題がある。ベリーマンは,人間の脳をクラッシュさせられる問題があるかもしれないと思いついた。
彼の発見により,世界は,「BLIT」テロリストの脅威にさらされることとなった。
銃も爆弾も必要ではなく,コピー機を使うだけでも,大量殺人が可能となる。
子どもたちの安全を守るために,「BLIT」の存在する可能性のある空間に人工の闇を覆いかぶせる対抗策がとられていた。
しかし,訓練!によって,そんな危険な「BLIT」への耐性を有するようになった子どもたちがいたのであります。
うむむ,脳をクラッシュさせる絵柄とは面白い発想です。
どことなく不吉で禍々しい絵にとりつかれてしまう…ホラー系によくありそうなお話ですが,この作品では,“瞬殺”,極めて無機的,即物的で,芸術的なにおいは全くありません。
そんな「BLIT」を眺めて耐える,秘密遊びをしていた子どもたち。
いわゆる“アホ”な連中ですが,まあ,子どもというものはえてしてそういうものでもあります。
それにしても,予防接種のような方法で若く柔軟な精神を訓練すれば「BLIT」の攻撃に対応できるようになるなんて,読者もびっくりのアナログな対抗策でありますね。
彼らを守る人工の闇は,特殊なバイオチップを頭に組み込まれることによって創出されているのですが,そのことも,なかなかに根深い問題があります。
本作品中でもさらりと触れられていますが,そのようなバイオチップは,いろんな目的に転用することもできますわね。
結構多様なアイデアを,ショート・ストーリーとして,器用にまとめあげているだけに,やや未消化で窮屈な感じもいたしますが,なかなか出色の作品であると思います。
2001年度ヒューゴー賞受賞作。
「SFマガジン」2002年1月号掲載。
