何だか御伽噺のような、風変わりな味わいをもった作品です。
題名にしてからが奇妙ですよね。
火を使うことを覚えた熊さんたちが,ケンタッキーからヴァージニアへと広がりつつあります。
主人公が最初に遭遇した熊たちは,松明をかかげていたのでした。
何とも,すっとぼけたような絵ですね。最初に読んだ「SFマガジン」の吾妻ひでお氏のイラストレーションは,なかなか雰囲気が出ています。
世間は彼らの話題で持ちきりになります。
ある日,母親がホームを抜け出したという知らせを聞き,主人公は,もしやと、先祖伝来の地所のそばにある、熊さんたちの焚火現場の一つに甥とともにやってきます。
丸く車座になって,黙々と焚火にあたる熊さんたち。時折,のそりと立ち上がって,焚木を補充する彼ら。その間にちょこんと座る母親。
主人公と甥が彼らの方へと歩み寄ると,熊さんたちは拒むでもなく身をよせあって場所をあけてくれます。
まるで,昔の囲炉裏端のようですね。火を囲むと,ゆらゆら揺れる炎を見つめながら何とはなしに無口になってしまうという気持ち,わかるなあ。ましてや,火を発見したての熊さんたちにとっては,よけいにそうでしょう。ともかく,母親は満足しているように見えました。
冷え込む一夜が過ぎ,朝になったとき,主人公と甥との間に座っていた母親は息を引き取っていたのです。
何とも,静かで心に染み入るようなお話です。甥の愛らしさも印象的。
作者の感性は独特のものがあります。しかも,それが独りよがりではなくて、広範な読者にアピールできる力を備えているんだと思います。ヒューゴー,ネビュラ,ローカス、さらにスタージョン記念賞まで、短編部門賞を総なめにしたのも,だてじゃありません。
ビッスンの他の短編については,著名作家が小さな町にわんさか現れるという不思議なユーモアもの「二人ジャネット」や,切り立つ大山脈登りを稼業とするトラック野郎と少年ヒッチハイカーのお話「平ら山のてっぺん」や,被害者のための報復用に作られた殺人犯のクローンたちのお話「マックたち」などがいいですね。まあ,たいていの人がそうなんでしょうが。
とりわけ,「マックたち」は,強烈な印象を残す作品です。

