カリフォルニアのその夜の月はいつもと違いました。
地表を真珠色に輝かせるほどの光を放っているのです。
太陽が新星となったのでしょうか?
もしそうなら,地球の昼側は強烈な放射にさらされ,大洋が煮えたぎった蒸気と高温の空気が,破壊的衝撃波となって,夜側に殺到してくるはずです。
主人公スタンは,女友達レスリーとこの世の最後の時間を過ごそうとします。
直に猛烈な暴風雨が襲ってきますが,やってくるはずの衝撃波が来ません。
とすると,新星爆発ではなかったのか。大規模なフレアだったのかも。
しかし,フレアであっても,昼側の世界は,壊滅的ダメージを受けたに違いありません。たとえ,夜側の世界で人々が生きのびようと,苦難の日々が待ち構えているはずです。
ラリー・ニーヴンの1972年ヒューゴー賞短編部門受賞作。
コンパクトにまとまったディザスターものであるが,悲劇に際した人間ドラマというよりも,事象そのものを描くことに主眼が置かれているようです。
主人公たちの取り乱しようも想定の範囲内だし,あくまで,ディザスターを語らすためのナレーター的な役回しという感じ。
ともかく,青白く輝く月の凄惨なイメージは鮮烈。
Lunatic…まさに「狂気じみた」月である。
ハヤカワ文庫SF「無常の月」に収録。
2018年に刊行したベスト版ですね。
