灰色国からの贈物~マイクル・ビショップ①

 7歳のコーリーは,パパと別れ,ママと一緒にママの姉の家に同居することになりました。

 じとじとと水の染み出す灰色の臭いのする地下室の簡易ベッド。
 コーリーはときどき思います。

 地下室の壁の向こうには,灰色の怪物が潜み,ぼくを灰色の国に連れて行こうとしているのではないだろうか。

 コーリーは,灰色の壁に,ペンキで燃え上がる太陽,ランプ,熱帯の鳥を描き,その光の働きで灰色国人の侵入を食い止めようとします。

 ところが、この落書きに激怒した伯父は,コーリーを暗闇の地下室に閉じ込めるのですが…。


 薄倖の孤独な少年が壁にうつる幻想にとらわれる姿は,スタージョンの「影よ,影よ,影の国」とよく似ています。

 「影よ,…」と同様,無慈悲な行いをした者が,因果応報をうけるというのは決まりごとではあるのですが,その因果応報たるや…。

 実に,驚くべき展開が待っています。

 下手なホラーをはるかにしのぐ恐ろしさ。

 すべてを焼き焦がす太陽,おそるべき灰色国人の姿,禍々しく強烈な色彩が脳裏に焼きつき,いつまでも消えないような作品です。

 マイクル・ビショップの作品は,なかなか重苦しいものや,一筋縄でいかないとっつきにくさがあるのですが,この作品は,非常にわかりやすいし,なによりも,イメージの喚起力が特に素晴らしいと思います。

 まるでコーリーの世界に収斂してしまったような,この世の皮肉な姿とやりきれなさはたまりません。

 「SFマガジン」1987年1月号掲載。