本日の作品は,SFクラシックとして有名なものであります。
1934年,“ワンダー・ストーリーズ”に掲載されたこの小説は,
はじめて,全く人間とは異なる火星の生物を人類に紹介した,記念碑的な作品なのです(「SFマガジン」1963年6月号解説より)。
まあ,筋書きは,人類初の火星探検隊の一員が,探査機の事故により,否応なく体験することとなった冒険譚というものでありますが,いかにも,楽天的,お気楽なストーリーです。
“友情”を分かち合い,道行をともにする駝鳥のごとき火星人,人の心から掬い取った姿を現出させて罠にかける恐るべき“夢魔獣(ドリーム・ビースト)”,泥の町を築いている変な樽人,けったいな,まさに漫画的な楽しい異星人が顔を出します。杉浦茂さんの描きそうな感じですか(そこまで,ぶっとんではいないかな?)
憎めないといいますか,アホらしいといいますか。
私は,永久にピラミッドを作り続ける煉瓦職人生物が気に入りました(ベイリーさんにも通じそうです)。
さすがに,当時のSFという感じで,ところどころ啓蒙的なのが微笑ましい。嬉々として,科学的説明を講釈しているという様子がうかがえるんですよね。
主人公が,分捕ってきた戦利品は,キラキラ光る結晶体。
―その痛みが,魔法のように消え去っちまったんだ!その物質は,強いX線かガンマ線の特性を持っていたんだ。ただしもっと強いがね。患部組織を破壊して,健康な組織だけを残したんだ!
いやあ,これはアブナい“ブツ”ですなあ。リスキーやなあ…。
トゥイールと呼ぶ火星人との交流もおかしげです。
意外にも,真面目そうな“言語学的相違”を踏まえたうえでの意思疎通の模様が描かれていますが,最後は,そんなことを帳消しにするような情緒的な絆が強調される,ややご都合主義的展開となっております。
まあ,オール・タイム・ベストに入る作品とは言い難いものの,からりとした,時代遅れのズッコケ・ほのぼのユーモアの雰囲気は捨てがたいところもあります。
