棺~ロバート・リード②

 「棺」というのは,なにか陰気なタイトルですが,原題“Coffins”のとおりです。(複数形であるところが意味ありげですが。)

 遠く離れた星でのビジネスチャンスに賭けた男は,星間宇宙船に乗り込み,冷凍睡眠の方法をとりながら目的地を目指していましたが,運の悪いことに,宇宙船は未知の彗星と接触,“積荷”である,ライフ・スーツにくるまれた乗客たちが,船外に放り出されるという憂き目に会ってしまいます。

 「お客さまのライフスーツは超繊維製で,最新のエネルギー場でおおわれています。つまり超小型の星間船のなかにいるのとおなじです。専用の核融合炉と最新鋭の高性能リサイクル装置をつなげば,完全な自給自足が可能なのです。」

 救助の望みも消え,銀河系を離れて,虚空を突き進むライフスーツ。
 男は,全人類の知識がつまったライブラリーを有するコンピューターとともに漂流し,1千年の寿命を終えます。

 でも,生命は絶えてしまったわけじゃありません。
 発生したバクテリアを,コンピューターは注意深く培養し,突然変異を繰り返すごと,適切な取捨選択により,知能を有する「群体」にまで進化させていきます。

 そこに至るまで,一千万年の月日が流れます。


 この物語も,いわゆる「世代間宇宙船」のバージョンなのでしょうが,こういう世代交代のあり方はなかなか面白い発想ですね。

 「棺」とは,一つの生命の終りを意味しますが,この棺は,新たな生命の発生源でもあったわけです。

 「群体」は,人間と同じ機能を有し,おそらく,外観上も似通っているのではないかと思われますが,これはまあ,進化過程において,コンピューターの選択による恣意が入っているからということでございましょう。

 無辺の空間,悠久の時間…宇宙に対する素朴な思い,そのようなものが,この短編から感じ取れます。

 自分の生みの親の故郷の星に向かって,ロケットを発射する「群体」たちの姿には,親近感をもってしまいます。