最終戦争~バリー・N・マルツバーグ①

 ヘイスティングスの中隊は,敵軍とともに,広大な土地に宿営していました。

 木曜と土曜と火曜には,中隊は東へ移動して森を攻め取ります。金曜と日曜と水曜は,森の防禦戦に負けます。月曜ともなれば,全員疲れきって戦うこともできなくなります。

 居心地のよい森を巡る攻防戦も,このように奇妙な膠着状況が続いていました。

 一方で,こういう原則で動いている限りは,特段の問題は無かったのですが…。

 新任の大尉が,戦争の目的は森を越えるものだという方針を出してから,事情が一変します。

 「保養休暇」の取得に執着し続ける,やや神経病みのヘイスティングス

 ヘイスティングスの行動が,中隊の様々なことの支障の中心となっていると考える大尉。
 そんな両名からの言い分を聞かされながら,中隊の庶務一切を取り仕切らなければならない曹長

 ヘイスティングスと大尉の両名たちからすれば,まっとうな思いも,客観的には,被害妄想で,彼らの主張や行動は傍から見れば面白いかもしれませんが、彼らと関わる者にとっては、実に神経にさわるものです。

 「こんな狂人どもの世話を何でしないといけないのか」という,曹長の当然の苛立ちには,読者も共感するところでしょう。

 それだけでは終わらないのが,この作品の渋いところです。
 曹長の静かなる狂いぶりが,なんともいいですね。
 三者三様の全面戦争への関わりにおいて,ヘイスティングスと大尉は,受動的なのですが,曹長は能動的なのです。
 
 戦争のための軍隊か,それとも軍隊のための戦争かという素朴な疑問はもちろんのこととして,軍隊という硬直的組織が想定外のできごとに意外なもろさを見せることへの痛烈な視点も含めて,いわゆる“反戦もの”という面はあります。
 
 でも,どちらかといえば,異常な心理状況の中で状況が悪化していく不条理さを描くブラックユーモア作品として楽しめるものだと思いますね。(楽しむというのは語弊
があるかもしれませんが)

 マルツバーグの有名な中篇「ローマという名の島宇宙」でもそうですが,息苦しいような圧迫感あるユーモアというのが,マルツバーグの持ち味と思います。

 ハッピーエンドじゃないだけに,読後感がすっきりしないというのは,この作者だけにやむを得ませんが。

 「SFマガジン」 1977年6月号掲載。