これはまあ何と言ったらよい話なんでしょう。
初老の女教師が,押し寄せてくる死者の群れを撃退するというスプラッター・ホラーでありながら,生徒への無条件の愛情と教職の尊さに感動を呼び起こさせる話でもあるといえば,訳わかりませんよねえ。
それを力技で結びつけたのが,この作品です。
ゾンビと化した子供たちを教室に集めて授業を行うというギース先生の姿には,尊敬の念を抱くのはもちろんではありますが,狂気じみたグロテスクさを感じさせ,気味悪いブラック・ユーモアも漂っています。
でも,ギース先生の教師としての信念…子供を守るという揺るぎない気持ちには,やっぱり頭が下がる気がします。
「ギース先生は三十八年にわたって子供たちを守ってきた。子供たちをお互い自身から,彼らの中にいる暴れん坊や卑劣漢から,鈍感で愚かな教師や無能な管理者から,不適切なカリキュラムから,一時的に流行している哲学から守ってきた。ギース先生は力の及ぶ限り,彼女の担任する四年生を,まだ早すぎる大人向けの文化や,低俗であることに満足する社会の低俗性から守ってきたのだ。」
作者にも,教師経験があることからも,思わず,熱っぽさが出ているのでしょう。
大挙して襲ってきたゾンビどもを,かろうじて始末して疲れきったギース先生。
鎖を解き放った子供たちが,ぞろぞろと,先生が座り込む教室へと戻ってきます。
無残な結末にするのも,救いのないホラーとしてありなのですが,作者はそうはしませんでした。
こういう結末とは予想しなかったですね。
ギース先生も,少しは報われたというのかな。
でも,明るい未来はないよねえ。
この作品は,ジョン・スキップ&クレイグ・スペクター編のスプラッター・ホラー・アンソロジー「Stil Dead:Book of the Dead 2」に収録されたものですが,同アンソロジー第一弾は,創元推理文庫から「死霊の宴」という題で上下2巻が刊行されています。
きわもの的な趣向とはいえ,意外にも,ハイレベルのアンソロジーであります。 第二弾も,この作品が収録されているのなら,それなりの内容を期待できると思うのですが,第一弾も品切れの状況では,第二弾の刊行は残念ながら期待薄でしょう。
1993年度世界幻想文学大賞,ブラム・ストーカー賞・短編部門受賞作。
河出書房の奇想コレクション「夜更けのエントロピー」に収録。



