この作品は,巨匠スタージョン晩年のもので,ヒューゴー賞,ネビュラ賞のダブル・クラウンに輝きましたが,賞とは縁遠い(「人間以上」が世界幻想文学大賞受賞)スタージョンさんに対して,その“健在”ぶりへの敬意の意味もあったと思いますね。
物語は,相も変わらず,変てこりんな話です。
癌を患い自暴自棄となった若い女性が,世間に背を向けた暮らしをしている男のもとへと迷い込みます。
男は,実は,大変なアイデアを次から次へと生み出すことのできる天才なのですが,どうも世間との折り合いが悪い人のようです。
そんな彼ですが,彼女の悪いところを,彼の考案した方法により,施療します。
だけど,ナイーブな彼は,彼女の感謝を素直に受け取れません。
これまでの人生,裏切られつつ続けた苦い思いがあるからです。
あの実験室にはいつになっても日の目を見そうもない大型の発明が半ダースほど眠っているし,頭の中には五十あまりのアイディアが埋もれている。
しかし,砂漠を緑にして花を咲かせる方法を教えられても,そこで殺し合うほうを好む人間どもの世界,石油依存は我々の命とりになると繰返し叫ばれていながら,何十億もの金が石油を掘り当てる競争に注ぎこまれている世界,そんな世界で一体何ができるというんだ?そうさ,ぼくは怒っている。怒らないはずがないじゃないか。
固い殻にくるまっている彼を,いたわるように,優しくたしなめながら勇気付けるように,彼女が手を差し伸べてきます。
“盆栽”と物語とをどう結びつけるのかなと思っていましたが,こういう持っていき方だったんですね。
なかなかこちらの思い通りにはいかないものの,あるべき姿を目指して,時には反発しあいながらも,時を重ねて成長する。
それは,人そのものへの対し方とイコールであるとスタージョンさんはおっしゃいます。
一筋縄でいかない,だからこそ,“盆栽”の味が出るということでしょうか。
ちょいと枯れた味のある繊細な愛を描いており,私ら中年⇒初老には,ほっと癒されるところのある作品です。
蛇足ですが,邦題名は,「ゆるやかな彫刻」の方が,私は好みですね。
