風来坊のきままな旅を続けるジョー・ベイカー。
相棒のごときズックのかばん一つを携えて,世界の各所を渡り歩いてきたのであります。
そんなジョーも,インディアナ州のこの町で,終生の伴侶としたい女性ジニーと出会います。
永遠に旅していられるものじゃない。いつかは根をおろすときがくる。今夜がそのときなのだ―
ジニーに結婚を申し込むジョーですが,ジニーは言います。
本当に渡り鳥生活をやめて,永久に落ち着きたいの?それができると本当に思う?
ジョーは混乱します。自分の本当の年がいくつか思い出せないのです。
いったい,どれくらい長く旅を続けていたのだろう?
宿に帰ったジョーを,「かばん」がこの町から彼を引き離すがごとく,強力な力を及ぼします。
おまえは呪いを口にしたのだ,ジョー―。何といったか,覚えているか? たとえ千年生きたって,家になんか帰るもんか―
アラン・E・ナースのファンタジックな小編です。
ズックかばん一つで,町から町へと出会いと別れを惜しみつつさすらう旅人。
次第に老いていく哀愁というものがつきものなのですが,ジョーの場合はちょっと違います。
たとえ,呪いを受けているとはいえど,いつまでも若さを保ち続けながら旅を続ける―ある意味で魅力的なことでもあります。
ちょいと洒落たエンディングも,この「若さ」を保つということに,ジニーの女心もくすぐられたんじゃないかなと思ってしまいました。
まあ,他愛もない話といってしまえばそれまでなのですが,日々のあくせくした生活の中で,ほっこり和らぐことのできる,読後感のよい物語であります。
少し,「地獄行列車」とも似ていますね。
「SFマガジン」1969年4月号掲載。