核戦争の勃発後、ロスアンゼルスから避難する一家の道行きを描く作品です。
主人公のジモン氏は実直で実務的な男。
一家の主人たるにふさわしい尊敬を受けてきたわけではありませんが,この未曾有の危機に際して,入念な準備と冷静かつ適確な判断により,見事に一家を導いていきます。
しかしながら,細君と息子たちが,俗物であり,愚物なんですよね。
彼らの無能ぶりをこきおろす筆致はシニカルすぎて、いっそ痛快なほどです。
安寧な日常がひっくり返ってしまった今,主人公が,家族ですら,来るべき世界の適応者か,あるいは非適応者かを,極めて冷静(冷酷かな)な眼でシビアに判断していく様は,家族愛などどこへやら。
でも主人公の確固たる自信は,危険だけれど魅力があるんですよね。
日常で抑圧されていたものから解放され,本来の資質ある自分に戻ることができたといいますか。
そこらへんが相乗して,非常に密度の濃い緊迫感ある作品に仕上がっていると思います。
ラストの衝撃度はすばらしい。
この作品には,続編があります。
「ロトの娘」というタイトルで,「SFマガジン 1967.10月号」に掲載されています。
残念ながら,前作で、リーダーの輝きを見せていたジモン氏が,数年にわたる自給自足的生活の中で,所詮は都会人の弱さをさらけ出し,輝きも消えうせかけていたのです。作品自体も同様ですね。
やっぱり名作の続編というのは難しいですね。
「破滅の日-海外SF傑作選(講談社文庫)」に収録されている作品。
最近,創元SF文庫のアンソロジー「地球の静止する日」に再録された。
ところで,「破滅の日-海外SF傑作選(講談社文庫)」の福島正美氏の解説では,作者をC.L.ムーアとしているが,ムーア違いでウォード・ムーアが正解。


