わが植物の愛は育まれるであろう
帝国よりも大きく,ゆるやかに
地球から遥か離れた彼方,未知の緑の惑星4470へとやってきた10人の極地調査隊。
彼らの中に,オスデンという名の“感覚担当”なる乗組員がいましたが,その役割は,エンパシー能力,つまり広域にわたる生物感情の感知能力を期待されてのものでした。
ところが,彼は,他の乗組員と衝突を繰り返すトラブルメーカー。
彼に対する乗組員の嫌悪や敵意をそのまま投射しているらしいのだが。
惑星4470は,どうも純粋な植物惑星のようである。
ところが,探査に出た乗組員は,はっきりとはわからないが,何かが“森”に存在するといいます。
そんな中,単独探査を行っていたオスデンが,血まみれの人事不省状態で発見救助され,“恐怖”を感じたという彼の言動に,一同の不安は募っていくのですが…。
オスデンの攻撃的で,自己中心的で排他的な言動は,読んでいても不愉快になりますが,だんだん,これは彼だけのせいではないのだとわかってきます。
エンパシーなる能力を持つが故の自己防衛機能であると。
「なぜぼくがあんたたちが嫌いなのか,あんたたちが僕を嫌うのか?ぼくらがはじめて会ったときからあんたたちがぼくに対して感じた拒否的攻撃的な感情を,ぼくが送りかえしているってことがわからないのか?」
この未知の惑星における植物たちは,それぞれに連結し,一個の意識をもった共同体のようであり,それが,探検隊に対して感じた不安と恐怖の感情をオスデンは感応したということです。
孤立と,他者というものがあるという始めての体験におびえる“植物たち”は,自閉症であった過去をもつオスデンにとって共通するものがあり,ついには心通わせることになったのでありましょう。
それは,オスデンにとって,人間の中にいては,決して得ることの出来ないものであったのかもしれません。
ル・グゥインさんの作品は,それぞれ何らかの関連性を有するものが多いので,一通り読まないと背景が見えてこない不安がありますが,この短編は,一応独立したものとして読むことができます。
タイトルに引用されている詩は,オールディスの「地球の長い午後」にも引用されています。
