工員~ロバート・リード①

 とある組立工場の休憩時間に,煙草を喫みながら下世話な話でわいわいやっている連中に加わらず,離れた片隅で,本に読み耽る主人公。

 感銘を受けたフレーズを壁に書きつけ,「俺は,こんなところにくすぶっている人間じゃないんだ」という態度を匂わせるプライドの高い男。

 でも,彼の仕事は,当日欠員となった部署に組み込まれる雑役工。
 作者も,かなり、いけずな設定にしています。
 
 その工場に,異星人が視察にやってくる機会がおとずれました。

 この自意識過剰の主人公は,自分が価値ある人間,異星人にとっても,ともに語るにふさわしいひとかどの人物であると認めてもらうことを期待するのですが…。


 多少なりとも,主人公と共感できる?屈折した感情をお持ちの方なら,この話は,やけに身につまされるのではないでしょうか。

 純文学と比較して,軽侮の視線を受けがちであったSFファンなら(といっても,昔の話で,こういうことは消えてなくなったと思いますが。)、なおさらかな。

 自分は,ほかの連中とは違うんだ…といっても,それならば,自分が属するにふさわしいと思う世界に加われるだけの力量があり,努力もしたのかというと,そうとも言い切れない。

 しょうがなしに,孤高を保とうとするような人間は,仲間から疎んじられてもしようがないですよね。

 態度には出さなくとも,なんか拗ねたような,世間を斜交いに見がちな人は,どうしても、浮いてしまうでしょう。

 さて,異星人なら理解してくれると思ったのが主人公の間違いのもと。

 異星人は,工員仲間の談笑の和に入り,ポーカー・ゲームに加わり,彼らの興味本位の不躾な話にも嫌な顔一つしません。

 これまで,いろんな種族との交流・支援を行ってきた経験がものをいい,彼らへの接し方も堂にいったもの。

 すっかり、みんなに溶け込む異星人に,思惑外れて呆然としてしまう主人公。

 あまつさえ,その異星人からの仕掛けに逆上してしまい,手厳しい評価を下されてしまうという,何ともシビアで切ないオチがついています。

 異星人ほどにも,仲間に溶け込めない主人公こそ,ほんとの“異星人”なんでしょう。

 ロバート・リードは,「棺」という短編(ハヤカワ文庫SF「90年代SF傑作選 下」収録)の方が有名かな。

 宇宙空間を彷徨うカプセル・ロケットに閉じ込められた主人公の異様な再生を描いた物語で,バカまじめないい作品なのですが,個人的には,本作の方が好きですね。

 「SFマガジン 1993年11月号」掲載。