エドモンド・ハミルトン①~「審判のあとで」

 最近エドモンド・ハミルトンの短編がクローズアップされている…といえば大袈裟だが,創元SF文庫での全集的な刊行や奇想コレクションなど,作品を読む機会がずいぶん得やすくなったことは事実である。

 昔は,「スペース・オペラを書く人」と思っていたし,短編集も絶版状態だったから,ほとんどスルーしていたのだが,奇想コレクションを読んで,だいぶイメージが変わった。

 正直,「フェッセンデンの宇宙」は,アイデアが余りにポピュラーになってしまったので,新鮮な感動を味わえず,古めかしさを感じたのだが,「向こうはどんなところだい?」で,これはいける!と思った。
 こういうペシミスティックで苦い持ち味を持っていたのか。

 「審判のあとで」は,創元SF文庫の短編集「反対進化」に収録されている。

 月面基地に残る人類最後の二人の男の話である。マーチンセンと自暴自棄気味にトランキライザー漬けになっているエラム

 地球上の人類が,放射能により突然変異した凶悪なバクテリアによって死に絶えたのか,都市の灯りは消え,何の応答もないのだ。

 基地からの指令により,外宇宙への探査を行っていたチャーリーと名づけられたサイボーグたちが,一体また一体と戻ってくる。
 マーチンセンは,丹念に記録を採取し,修繕を施していく。
 エラムは,いまさらそんなことをして何になるとからむ。

 黙々と,使命を果たして帰還し,ひっそりたたずむチャーリーたち。明かりの消えた分析室の闇に沈んで並ぶ彼らの姿に,マーチンセンは,人間とかけ離れたものへの恐怖を感じるが,ふと思い直す。

 彼らと,感情を分かつことはできない。だが,彼らも人類の衣鉢を継ぐ存在ではないのか。

 マーチンセンは,人類最後の仕事として,宇宙で邂逅するかもしれない未知の存在に向かって,人類とはどのような存在であったのかを伝えるべく,人類に関するデータをチャーリーたちに託して,再び宇宙へと送り出すのである。

 そして最後の探査艇が去るのを見届けると,そっとエラムの腕をもった。
 「さあ,ふるさとへ帰ろう」と。

 虚無感をこれほど漂わせた作品も珍しい。 
 人類の宿命と破滅へのやり場のない怒りから,何かすべてを達観したような境地へと入っていく,この暗くて静かな味わいは深く尾を引きます。