人里離れた集落サンタドーラ。
主人公デレクは、この地の恵まれた環境の中で研究を続け、ついに“クーパー効果”なるものを発見しました。
“クーパー効果”とは、ある生体が外部環境にもたらす影響を把握測定することで、その生体自体を推定し、ひいては、その再合成までもが可能になる道を開く画期的な発見でした。
喜びに沸く主人公に、サンタドーラの麗人、黒尽くめの衣装を身にまとい、サファイアのごとき青き眸の女性ナオミが真実を語り始めます。
これは、すべて私のために行われたことであり、すべてが私に帰属する。
このサンタドーラも、主人公の研究のためだけに造られたものであると。
この世には、完全なプライバシーを有する特別の人々がいて、彼らは、世を動かせるほどの富を有していますが、表には出てきません。一般の人々は、その存在すら知りません。
ナオミは、主人公に、死んだ恋人の再生を依頼します。
だが、クーパー効果の原理が発見されただけであり、それを実体化するためには、まだまだ時間を要するのです。
“完全なる富者”の一人として、医学の粋を集め、美しく若々しい肉体を保ち続けてきたナオミ。
恋人の再生まで、その肉体を保つことが出来ないと知った彼女は…。
いやいや,なにやら怪しい“クーパー効果”。
どうも似非科学的で、胡散臭くて、面白いけれど、まあ、この効果がどうこうという問題ではありません。
「美しさ」なるものにとらわれた女性の悲劇という、昔ながらのテーマを扱っています。
掲載誌の「奇想天外」の解説では、「女心の哀しさを衝撃的に描いた傑作で、これは数々の恋を経験した大人でなくてはわからないものかもしれません」と記されています。
時とともに衰える容色という定めにおののく女性のせつない思いが、物語の背骨になっているため,目鼻立ちのはっきりとした作品になっているなと感じます。
主人公がナオミの望みにより、大きな古時計を断崖から投げ落とすシーンなど、心に残る場面も結構あります。
設定が何かと現実離れしている点は割り引いても,なかなか読ませる作品であると思います。
それにしても,女性観が古いかも。
