主人公のテインは,よろず修理屋兼骨董商を営む男。
ある日,テレビの修理を頼まれ,作業場に一晩置いておいたところ,何もしていないのに,故障が直っていたのです。しかも,白黒がカラーTVに!
森で見つかった不思議な物体や,作業場の梁と梁の間に張られた,ドリルでも歯がたたない不思議な膜。
テインは,何かがやってきて,自分の家に住みついていることを感じます。
いろんなものを修理するのは,場所の借賃のつもりなのでしょうか。
そのうち,外からは,テインの家の前面が見えなくなってしまいます。
家の中からは,ちゃんと前面はあるのですが,面しているのは,なんと砂漠が広がる光景なのです。
つまり,テインの家は,異世界との接点となっていたのです。
この不思議な状況を嗅ぎつけた軍は,一切合財を接収しようとするのですが。
シマックの代表的な短編(中篇かな)として有名な,1959年度ヒューゴー賞短編部門受賞作品です。
古き良きSFとして,オールタイム・ベストにあがってくる作品でもあるのですが,実に,ノスタルジックで通俗的な作品であるともいえましょう。
主人公の「ヤンキー魂」に大いに共感する人が多いのかな。
独立不羈の精神をもち,自分の土地を守るためには,筋を曲げない不屈の男。
権力の圧力にも屈しない姿と,最後は自らの権利を認めさせるということに,喝采を送るというお国柄(一般論でいってしまうのは極論かな)なのでしょうか。
さらに,主人公にしても,ボーっとした相棒にしても,とりたてて秀でた人間ではありません。
『庶民ですよ』というところが,一般受けするという、古手のお話なんでしょうか。
また,実に素朴な話でもあります。
いくら主人公の手先が器用でも,白黒をカラーTVに直すことなんて無理だし,ましてや,コンピューターなど不可能。
これを,職人の無意識的な奇跡的能力の発揮ということにもっていくというのも結構粗くて強引です(主人公が直したわけではないんだけれど)。
異星人の反重力の技術と,「ペンキ」の技術とを交換しようとするのも,すごい話です。
いや,別に,この作品をあげつらっているわけではないし,よくいわれる「田園的」雰囲気は私も好きで,「中継ステーション」などは愛読しているのですが,これが,シマックの代表的な短編というのはどうかなとは思います。
「埃まみれのゼブラ」もそうですが,あまり,シマックのユーモア系作品には,ピンとこないところがあるからかもしれません。
個人的には,短編の中では,「踊る鹿の洞窟」が一番だと思います。
ハヤカワ文庫SF「大きな前庭」収録。
