マイクは,孤児施設を脱走し,ローズウェルへと向かおうとしていた。
目指すローズウェルの町,いかがわしい稼業の家々が軒を連ねる「夢の通り」を抜け,ゴッダード大通りの先には世界最大の宇宙港があります。
さしあたりは,マイクは,食い逃げを見逃してくれたばかりか,仕事さえ与えてくれたラリイ・ドビイのレストランで働き,ここを訪れる宇宙航路の船乗りたちの話に目を輝かせて聞き入ります。
そんなある日,施設長のギルマンがこの店へとやってきます。時間と手順を踏んで,宇宙への道を歩もうと諭すギルマンですが,マイクは逃げ出し,偽の証明書を手に入れ,宇宙港の補給会社の見習いに潜り込みます。
そして,密航のチャンスを待つのですが…。
宇宙への少年のみずみずしい憧れを描いた作品には,「広くてすてきな宇宙じゃないか」や,「ぼくがハリーズ・バーガー・ショップをやめたいきさつ」などが思い浮かびますが,宇宙はいいことばかりじゃないよと聞かされても,それでも意思を曲げない,そんなフロンティア・スピリットの伝統に立ったものなんでしょうね。
マイクをめぐる人々も魅力的に描かれています。
レストランの主人のラリイ,常連のリーバーマン船長,ギルマン。
ギルマンが,最も,深い,マイクの理解者であり,マイクを若かりし頃の自らに重ね合わせるようなラストは,ちょいとおセンチではありますが,よきSFという感じがいたします。
ギルマンの思いを際立たせるような,“現実主義”的な,いいおじさんのラリイも,なかなか説得力ある言葉を残します。
事を起す前にじっくり考えることだな。実は私も十五年前に,でっかいたくらみを持ってここにやって来たもんだ。人間てものは,自分が,世の中をあっと言わせるようにはできていないということを自覚した時に,大人になり始めるものなんだよ。
けっこう,身につまされますが…。
地味な小品ですが,心に残る作品です。
「SFマガジン」1974年3月号掲載。
