夜襲部隊~ロバート・R・マキャモン

 アラバマ州南部,週間高速道路沿いの辺鄙な場所にある―<ビッグ・ボブの店!給油とお食事>。

 その晩は,折しもトルネード警報が出ており,雨がたたきつけ,雷鳴が轟く,大荒れの天候。

 主人のボビーとウェイトレスのシェリル,常連のアラバマ警察のデニス,そして風雨の中,高速道路から避難してきた家族連れ。

 そして,歩く死人のような男が店に入ってきます。

 男の名は,プライス。

 彼は,ベトナムからの帰還兵であるが,特殊部隊の生き残りの忌まわしい過去をもち,その悪夢から逃れることができなくなっていたのです。

 そればかりか,その悪夢は,現実へと侵食しつつあったのです。

 数日前に,フロリダで発生した,モーテルでの惨殺事件にプライスが関係しているとみたデニスは,店を出て行こうとするプライスを殴打し,気絶させてしまいます。

 しばらくすると,嵐の咆哮の中から,ヘリのヒュン-ヒュンという音が近づいてきたのです。


 高速道路沿いの,給油と,コーヒーとハンバーガーを給仕する店というのは,実によく物語の舞台となりますね。

 アメリカの典型的な風景の一つなんでしょう。

 嵐の夜という設定と,たまたま災難にでくわす家族連れなど,舞台配置も典型的で,映画を見ているような展開です。

 その意味では,先の読めてしまうお話なんだが,だからといって面白くないことはありません。

 設定がきっちりとされているだけに,できあがりのきれいな正統派ホラーという感じかな。

 ただ,悪夢の現実化の原因について説明する必要はあるのだろうか。下手な理屈はつけない方がよいのかなと少し思いました。

 さて,この作品は,1980年代半ばのオリジナル・アンソロジーに収録されたものですが,こういう作品を読むと,ベトナム戦争の悪夢の記憶は,まだまだ,リアルで,アメリカ社会の中ではトラウマとして忘れられないものであるのだなと思います。

 ベトナム戦争について,軽いのりで話しかけたデニスに対して,プライスがそのおぞましい体験をぶちまけ,鼻白むデニスに,知ったような口をたたくなと吐き捨てるように言う場面は印象に残ります。

 極限を体験した者と体験せざる者,そのギャップは,簡単に埋まるものでもなく,理解することも難しいのでしょう。

 イラク帰還兵にも,「PTSD=心的外傷後ストレス障害」が生じているとの報道もあります。

 彼らにも,第二のベトナム帰還兵のような問題が生じるのでしょうか。

 新潮文庫「ナイト・ソウルズ」収録。