変種第二号~フィリップ・K・ディック⑥

 米ソの核戦争により荒廃した地球。
 地表は,オートメーションの兵器工場から生み出される,恐るべき殺人機械が跳梁する世界となっていた。

 アメリカは,政府機関などの中枢を月基地に移し,地球上は,月からの指令を受けて地下に潜伏した両陣営の兵士たちが抗争している・・・というよりも,殺人機械が地表を動き回るだけで,勝利の帰趨すら不明な状況に陥っていたのである。

 殺人機械は,自ら改良を重ね,姿まで人間そっくりの機械さえ出現していたのだ。


 『スクリーマーズ』という題名で映画化されたディック初期の短編であります。 

 いかにも紋切り調の言葉となってしまいますが,まさにスリルとサスペンスにあふれた見事な作品といえましょう。

 テディベアを抱いたやせぎすの少年が,兵士を油断させ地下壕に潜入するための殺人機械であったとは…

 のっけから痺れさせてくれる展開です。
 「ターミネイター」の殺人マシーンを思わせます。

 このような“人間型”の変種第一号が傷痍軍人型,第三号がテディベア少年。
 第二号もあるはずだが,どのような姿かわからない。

 小さな地下壕に集まった両陣営の兵士たちが,互いに,殺人機械じゃなかろうかと疑心暗鬼にかられるシーンはお得意のパターン。

 ヘンドリックス少佐が,すでに機械に制圧されてしまっているのかもしれない自軍の地下壕に戻って,呼びかけを試みるシーンや,人間型の殺人機械が列をなして襲いくるシーンなどは,極めて不気味で悪夢のような迫力があり,光景が目に浮かぶようです。

 最後のどんでん返しも,ばっちり決まり,もはや機械どうしの争いへと移行しつつある様を皮肉に暗示するラストもよろしい。ある意味、人間の立派な後継者ですな。

 全体として,ディックにしては,まとまりすぎていて、破綻の無いストーリーが物足りないという向きもあるかも。

 ハヤカワ文庫SF ディック短編集①「パーキー・パットの日々」に収録。

 今は、タイトルナンバーとして組みなおされた短篇集バージョンとなっています。